花鳥風月

□杏仁豆腐
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「兄様!助けてください、この人はなんなんです?」

義兄が来た、これみよがしに黄色頭のことを言いつけてやった。
隣の黄色頭は「げっ、」とした顔で義兄の方を向く。

「いや、惣右介、違うんや」

黄色頭は必死に弁解するも義兄の黒いオーラは膨れ上がるばかり。
私がふざけて言いつけただけで、ここまで義兄が怒るとは思ってなかった。
この黄色頭は仮にも五番隊隊長なのに、副隊長の義兄に怯えているところが少し不憫だと思った。

「絵留、この人は仮にも五番隊隊長ですが、今後無視して構いませんよ」

「おい、惣右介。仮にもって何や」

私はそうにこりと微笑んで言う義兄に苦笑いで返す。
でも、五番隊隊長の黄色頭も義兄と何かと仲良さそうだし少し安心した。
護廷十三隊に入るのは少し楽しそうだとも思った。

「あ、そうや。惣右介の大好物の豆腐持ってきてん」

そう言って黄色頭は紙袋を取り出した。
お土産にと、豆腐はなんだ、と少し考えさせられたが、義兄の好物だからまぁいいだろうと勝手に納得する。

「そうなんですか、ありがたく受け取っておきます」

そう言って義兄は紙袋を受け取り、中身をのぞき込む。不法侵入して来たのはともかく、黄色頭が手土産を持ってきたことには感心した。

「これって、杏仁豆腐ですよね」

「そうや?」

がっくりと、という程までじゃないが肩を落とす義兄に黄色頭はさっきのようにまたニシシと笑った。確かに、豆腐と杏仁豆腐では全然違うから。
杏仁豆腐かぁ。美味しそう。

「兄様もそこの黄色……いや、平子隊長もここでその杏仁豆腐、いただきませんか?」

「おい小娘、今なんて言おうとしたんや。言ってみい」

間違えた。ついつい黄色頭って言いかけてしまった。黄色頭は私に文句を言いながら私の頬をつねる。

「いひゃい。何すふんでひゅ」

「平子隊長、絵留をいじめるのはやめてください」

義兄に注意され、手を引っ込めたと思った黄色頭だったが私の頭をくしゃくしゃと荒っぽく撫でる。私は拒絶しながらも彼を睨んだ。
どうせ犬だとでも思ってるんだろう。どいつもこいつも酷いやつばかりだ。
義兄は はぁ、と大きくため息をつくと話を切り出した。

「じゃあ、絵留の言うとおり、ここでいただきましょうか。平子隊長もどうぞ」

「え、ほんまに!?」

私の隣でヤッターだの、ラッキーだの騒いでいる黄色頭に私は呆れた。
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