花鳥風月

□嗚呼、初めまして
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「どうです?似合ってますか?兄様」

運悪く、偶然にも、本当に不本意だが試験に合格してしまった私は今から初めて死神として働くことになった。
初めて袖を通す新品の死装束にウキウキしながら義兄に見せつける。

「よく似合ってますよ。あ、でも左前になっています」

「えっ!?」

自分で見直すと確かに左が前になっていた。「ちょっと、着替え直してきます」と義兄には声をかけ、隣の部屋へと移る。少し張り切りすぎたみたいだ。

「直してきました、ははは……」

あそこまで見せつけておいて着方が間違っていたなんて恥ずかしすぎる。笑ってごまかしたが、義兄は相変わらずニコニコしていて何を考えているのか分からない。これは上手くごまかせたのだろうか。

「あ、この事は平子隊長とかには秘密ですからね」

私はそう言いながら目の前の彼を軽く睨んだ。

「大丈夫ですよ」

そう、この義兄は誰に私のことを言いふらしているのか分からないのだ。それが兄弟愛ゆえだとしても私的にはやっぱり許せない。
大丈夫とは答えているものの目の前の彼を信じていいのか見かねていると彼は口を開いた。

「さ、準備もできたようですし、行きましょうか」

差し出された義兄の手を私は握る。
私はまだ子供なのでこの新品の死装束は特注だ。因みにギンもそうらしい。
上から目線のくせに私と変わらないじゃないか、と心の中でギンをバカにしたがなんだか自分で言っといて悲しくなったのでやめた。

「絵留はどこの隊に配属されるんでしょうね」

「五番隊だといいのですが」とつぶやく義兄に私は「それだけはやめてくれ」と心の中で抗議する。黄色頭もいるし、ギンも、それに義兄もいる五番隊などに入ったら周りの目が怖い。

社会的に抹殺されそうな気もしてきた。

「そうですね、ははは……」

もう朝から2回もごまかし笑いをしてしまった。私的には義兄がニコニコといつものようにしていればそれでいい。
心の中では「五番隊だけは勘弁」と必死に願っていた。
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