花鳥風月
□花のように
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「イケメンを見に行こう」
放課後、花奈にそう誘われ抜け駆けしてどこかの貴族だと思われる屋敷へと侵入している。
一応花奈には注意したものの、「なーに、大丈夫大丈夫。絵留がいるもん」と、簡単にあしらわれてしまった。どれだけ私と言っても大人にしかも護衛に付いているような人たちには太刀打ち出来ないと心の中で呟く。
義兄であるメガネ男にもあまり迷惑はかけたくないというのが正直なところ。
「なぁ、もう帰ろ。ここからは流石に……」
私達は体が小さいため、いろんな所をスイスイとくぐり抜けてきた。でも、もうそろそろ帰らないと本当にこの屋敷から出れなくなる。とにかく、メガネ男に迷惑かけたくないんだってば。
「ちょっと待って!いつもこの時間、この庭で稽古をしているの」
イケメンには目がない花奈。貴女は一体ストーカーなの?と突っ込みたくなる気持ちを抑えて渋々彼女の言葉を飲む。
花奈がそう言った矢先、出てきたのは本当に綺麗な男の子だった。艶のある黒髪で肌は白いし、花奈がストーカーしたくなるのもわかる気がする。確かに絶世の美男子……、イケメンだわ、この男の子。
「ちょっと、絵留!?」
私は知らず知らずのうちに足を踏み出していた。あの男の子と仲良くなりたい、と思った一心に。私を呼び止める花奈の声が聞こえたけどもう気にしない。諦めたのか、花奈は私の後を追ってきた。
「誰だよ!?」
グイグイと近づく私に気づき戸惑った男の子は木刀を片手に後ずさる。異変に気づいたおつきと思われる人達はあわあわと慌てるばかり。
「私の名前は藍染 絵留。君は?」
普通に堂々と名乗り出たこの時の私を思うと、かなり勇気ある行動をしていたんだなと後から気づいた。