hpmi 2 麻天狼
□かみさま、ひとつだけ
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四捨五入して30とか、まだ早くないですか
かくにも、私の初恋は親の転勤によって木っ端微に塵となり実らず終わりを告げたのがつまらない結末だった。
割と都心部で小学生時代を過ごしたが中学にあがり過疎がすすんだ地方ディビジョンで今の今まで、25歳まで親元を離れずに過ごしていたのだ。
The☆スネKAZIRI☆
とまぁ干物女まっしぐらの生活を送っているわけです。田舎はみんな結婚が早いんだぁ〜。
おめぇまだいい相手見つかんねぇのか!と町のじいさんらが煩いったらありゃしない。ほっといてくれ!
中学生では部活動に励み、地獄のランニングで痩せていった。脂肪でまみれていた身体は引き締まり、筋肉もうっすらついてくびれもできたのには跳んで喜んだのを覚えている。
いくらか痩せたのに伴い、見た目もいくらかマシになってメイクも楽しくなっていった。転校前とはうってかわって友人もでき、充実した学生生活を送っていた。
もちろん、恋愛もそうだ。いくつか自分の容姿にも自信を取り戻すことができた中、転機が訪れた。
それなりに青春を謳歌し過ごしていくなかで仲の良い男友達も出来た。田舎は都会と比べ、男女の仲が良いのはあると思うけど。
少しチャラいけど、話しやすい男子から告白され初めてのことに舞い上がった中学2年生半ばの私は二つ返事でokと返事をした。
「ねぇ、雪ちゃん!」
「佐井野と付き合ったってホント!?」
『う、うん…情報早いね。』
初めての彼氏。一緒にお昼食べて、部活終わるのを待って一緒に帰る。手汗を気にしながら繋いだ手も、ふれあう唇も。沢山の初めてにドキドキと胸が高鳴っていたんだろう。見るものすべてがキラキラと輝いていた世界が、中学3年に上がる頃崩れ去った。
部活が終わり、彼が待つ教室に向かう。教室に着いたが、中から数人の男子生徒の声が漏れていた。話の途中なら悪いしと、携帯を取り出し下駄箱で待ってるとメールしていると会話の内容が耳に入ってくる。
「美鷹可愛いよな〜。いいなぁ、佐井野」
「だろ〜?」
「かなり痩せたよな。でもおっぱいデケーし。」
「おー、デブのまんまだったら絶対付き合ってねーけどな。」
「はぁ、外見だけかよ!」
「一番大事だろ?」
「サイテーだな!」
ゲラゲラと、下品な笑い声が廊下まで漏れている。
私はメール画面の文字を全て消し、先に帰ったとだけ打ってその場を後にした。
家に帰って、ご飯も食べて、お風呂に浸かった。携帯はメールを送ってから見ていない。ちゃぷん、と湯船に波紋が広がる。じわじわと涙が溢れてきた。
怒りと悲しみがこんがらがって、意味がわからない。なにより、私は変われたんだと勘違いしていたことに気がついて虚しくなった。見た目が変わっただけで、中身はなんにも変わってない。人から好かれるような人間じゃないんだ。
それからしばらく、そのままにしていたがやっぱり耐えきれず別れを切り出し初めての交際は終わりを告げた。
それから中学生活は最後の引退試合にむけて部活に打ち込んで終わった。高校でも二回程彼氏はできたが長く続かず。
自覚しない内に、トラウマをかかえて人を好きになることにブレーキをかけてしまっていたのかもしれない。あくまで自覚してないからかもしれないだけかも。恋愛なんて定義も目にも見えない気持ちが司るものの正解なんて今でも分からないんだけどね。
そのまま大学には行かず、少し開けた駅前の会社に就職した。営業として働き、足は浮腫んでパンプスによる靴擦れに毎晩枕を濡らしながら過ごすこと7年。
まさかの会社倒産。あり得ない。
現実にそんなことある?と両親に泣きついたのも定期。
25歳で無職となった私は絶望したが、さらに親から爆弾発言。
「もう25にもなってグータラしてないで、嫁入りの準備も兼ねて一人暮らししなさい」
『え!?まだ25歳だよ〜!?』
「四捨五入したら30!30にもなって親の脛をかじるのやめなさい。」
『なんで四捨五入するのよ〜!?まだ25歳はぴちぴちだよぉぉぉぉ』
私の必死のパッチの説得ももろともせず。
母上の意思は固く変わらず私は家を出ることとなった。これを機に都会に出てやる。と、ちょっとやさぐれ気味に昔住んでいたというだけで新宿という勤務地を選んでしまったのだった。
そうして、私の社畜生活が始まった。