hpmi 5 短編*シリーズ

□HB
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今日は俺の誕生日。0時を過ぎた頃と朝みんなが起きたであろう時間に固まっておめでとうと友人たちや学校の女子達からメッセージが届いた。それにお礼のメッセージを返していくも、アイツからのメッセージは届いていなかった。おいおい、忘れてんのか?…いや、そもそも俺の誕生日知ってんのかな。つーか俺、凪の誕生日知らねーや。聞こう。

そんなこんなでモヤモヤを抱えながら学校へ登校する。勿論朝から兄ちゃんからおめでとうって祝ってもらったから運気と気分は最高だぜ。三郎も憎まれ口を叩きながらもちゃんと祝いの言葉を言ってくれた。もーちょい可愛げがありゃ満点なんだけどよ。


「はよー!じろー!誕生日おめでとっ!」
「おう、さんきゅ!」
「プレゼントは俺のちゅー!」
「うぇっいらねぇよ!」
「ひっでぇ〜!」
「みろよ、もうお前の席プレゼントの山出来てんぞ〜」
「うお、やべぇもう授業はじまんのに…」
「去年もそうだったんだから早く来いよな。」
「これもはやお前の席ねぇから!ってプレゼントから聞こえてくるんだけど」
「笑ってねぇで手伝ってくれ!」
「やだよ。あーあ、俺もそれぐらいプレゼント欲しいなぁ」
「いやあれはありすぎんだろ」
「確かに。」

朝から友人やクラスメートから祝う言葉をかけられる。おふざけ混じりの会話がただ面白い。指摘され自分の席に目をやると色とりどりの箱やら袋やらが机を取り囲んでいた。忘れてた、今日箱持ってきてねぇな…。毎年、バレンタインと誕生日は持ち帰るために箱を持ってくるのだが今日はちょっと別のことが頭を占めておりすっかり忘れていたのだ。別のこととは勿論、凪のこと。そりゃカノジョに祝ってもらいてぇのは当然だろ?

授業が始まるまでもう5分もない。取り敢えずまとめられそうなものを纏めさせてもらい席に着いた。


────

それから昼休みもダチから誕プレだとジュースやパンなどを奢ってもらったり喋ったりしているとあっという間に過ぎちまった。ああ、凪に連絡しようと思ってたのによ。まぁしゃーねぇか。誕生日なんて知らねぇと祝いようもねぇし、こんなことでうだうだしてんのも女々しいしな。今日も屋上で過ごしてたのかな。なんて昼過ぎの空を窓越しに見上げて午後の授業も乗り越えた。結局凪とは連絡が取れておらず、ホームルームが終わって連絡をいれようとしたところで名前を呼ばれる。


『二郎!』
「っ…今行くー!それじゃあな」
「おう、じゃあまた月曜日〜」

名前を呼ばれて、ダチに声をかけて教室の扉で待つ凪のもとへ走る。その後ろ姿に、犬じゃんとダチらが喋ってたのは聞こえてなかった。

『重そうだね』
「まじで指千切そー。一旦家置いてきていい?」
『うん。家で待ってる。』
「えっ」
『なに、行きたいとこあった?』
「いや別にねぇけど。」

ドキリと心臓が強く脈打った。凪んちに行くのは何度目か。初めてではないのだが、こうやっぱ期待しちまうのは男なんで仕方ねぇだろ。急いで置いてくる!と慌てて帰路につく。ドタバタと鍵を開けて、自分の部屋にプレゼントを放り込む。兄ちゃんは仕事で、三郎は部屋にいんのかまだ帰って来てねぇのかは分かんなかったけど顔を会わすことなくすぐに家を出て凪の家に向かった。

『早かったね。』
「おう、急いできた。朝も昼も会えなかったし…」
『寂しかったんだ。どうぞ。』
「う、うるせー。邪魔します」
『誰もいないよ。』

誰も居なかろうが、挨拶をするのはフツーだろ?礼儀はちゃんと兄ちゃんから言われてるからな。そのまま凪の部屋に入り、二人きり。珍しく、ぺとりと腕にくっついてくる凪にソワソワと落ち着かない。

『今日は何時まで居れるの?』
「んー、多分20時には兄ちゃん帰ってくると思うからそれぐらいかな。」

家で誕生日パーティーだろうと分かっているのか何時もは聞かないことを聞いてくる凪。それでも、朝から気になっている言葉は口にしてこない。じゃあそんなに時間ないね、と凪が座っている俺の足を跨いで座ってきた。向かい合い、近づいた体温に心拍が早まる。

『誕生日プレゼント、私でいい?』
「っ、なんつーベタな」

フィクションでしか聞かないようなセリフなのに胸は高鳴り言葉に詰まる。冗談でそのまま言葉にすれば口づけで続きは飲み込まれた。しょっぱなから深いキスに、息遣いは荒くなりムラムラと性欲もむくむくと膨らんでいく。

『、だって、プレゼントあんなに貰ってたら何あげたらいいか分かんないんだもん。』
「はっ…くそ、可愛いこと言ってんなよ。」

口づけが途切れ、俺の鎖骨におでこをくっつけて爆弾発言を投下する凪。グリグリと頭を横に振ってすり寄り可愛くないと抗議の言葉を漏らす凪の表情が、どうしようもなく見たい。

「なぁ、顔見たい。」
『ムリ。絶対ぶさいく。』
「絶対かわいーから。ほらこっち向けって。」

両手で頬を包んで顔を上げさせれば、涙目でむすくれている。あまりの可愛さに吹き出したらまたすぐに俺の胸元に飛び込んできた。あーなんだこの可愛い生き物。ぎゅう、と抱き締めてやる。

「わりぃって。来年から受け取らねぇから。」
『……バレンタインも。』
「っ、わかったわかった。」
『…絶対うそ。お弁当もちゃんと受け取って必ず一口は箸つける人が義理だからとかいって渡されたら絶対うけとるやつじゃん。告白してきてフったら泣いて受け取るだけでも…って言ってこられたら絶対受け取るじゃん。誕プレも結局全部食べて全部ちゃんと使うんだ…』
「……わり、もう我慢できねぇわ。」

お前ってそんなキャラだっけ?と口にすれば、私も初めて知ったと返されて俺のトキメキはとまんねぇ。あまりの可愛さに、頭をあげさせてぷるんとした唇に噛みつき抱き潰した。




『…何にやついてんの。』
「いや、ヤキモチ焼いてくれてんの可愛かったなって。」
『うるさ。』
「うるさくねーし。」
『…はい、誕生日おめでとう。』
「えっ!?さんきゅー!!!」

情事を終えてにやにやと思い返しては緩む頬を指摘される。理由を答えればまた照れ隠しに口が悪くなる凪もまた可愛いんだよな。そんなやり取りのあと、はいとベッドサイドから持ち上げられ渡される紙袋と待ちに待った言葉が送られる。

「知ってたんだな。」
『そりゃあもう随分前から山田くんの誕プレ何する〜?って学校中の女子が騒いでましたから。』
「あー、」

また嫉妬してると言わんばかりの憎まれ口に、手の甲をデコにあてて堪能する。何よ、と訝しげに見てくる凪の頬を撫でた。

「凪が嫉妬してくれてんのも、誕プレだわ」
『は?ばかじゃないの。』
「いてっ、いてて!」

頬を包んでいた手をがぶりと噛まれた。照れ隠しなのは分かったから噛むなっつーの。帰る時間まであと30分。プレゼント開けていい?とか話したりくっついたりして、めちゃくちゃ幸せな時間だった。まじさんきゅ。ちゃんと凪の誕生日も聞いたから、次は俺が祝ってやるぜ。





2022

Happybirthday! Jiro!
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