hpmi 5 短編*シリーズ
□ノバスシリーズ
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とある公園のベンチ。そのベンチには本来腰かけるものなのだが、今は地面に座ってベンチを挟み向かい合う男2人が肘をその上に置いていた。
『レディー…』
お互いに握り合う手。ドキドキとするシチュエーションでは決してなく、私の掛け声と共にその腕の血管が浮かび上がる。
『ファイッ!』
「ぐっ!」「〜っ!」
これは男の戦い、腕相撲対決である。奥歯を食い縛りながらお互いの手の甲をベンチに付けさせようと必死である。ちなみに勝ったとてなにか景品が有るわけでなし、ただのプライドがかかってるくらいだ。2人の様子を眺めながらがんばれ〜と適当に声をかける。きっと2人の耳には届きやしてないんだろうし。
「ちっこい癖に、力はっあんだな」
「ああ!?誰がっチビだとぉ!?」
「ぅおっ!っりゃ!!」
一郎の煽りに空却が力の均衡を破りかけたが、一郎が逆転し空却の手の甲が先に付いてしまった。
「いってぇ!折れるかと思ったぜ…」
『お疲れ様〜』
「凪もやるか?」
ぷらぷらと空却が腕を振って、一郎は私を誘ってきた。流石に男女の力比べは無理があるんじゃないかなぁ。
『流石に力比べは負けるかも。それに私に負けたらクソダサすぎるくない?やめといてあげるよ。』
「おーおー、弱気かと思えば勝つ前提で喋りやがって!ちゃんと証明してやるから座りやがれ!」
『ええええー、だから負けるって言ってんじゃん』
「とか言いながら座ってんじゃねぇか」
ちょっとからかえば案の定空却が噛みついてきた。負けが確定だとしても、ゲームとして楽しむ分には私も参加したい。口では文句を垂れながら座る私に一郎がちゃんとツっこんでくれる。お互いの手を握り合い、一郎の合図に合わせて腕に力を込めた。
案の定勝って馬鹿にしたように笑ってくる空却に腹が立ってその赤頭を殴ってしまうまであと数十秒。
*腕相撲*