hpmi 5 短編*シリーズ

□ノバスシリーズ
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『あーっ!!』
「あ、」
「やべ見つかった。」

凪が叫び、並んで歩く空却と一郎を指差した。さされた二人はうげ、と顔を歪ませる。その顔は傷をこさえており、まだ血が滲むそれはつい先ほどまで殴り合いのケンカをしていたことを物語っている。

『またケンカしてたの?ずるーい』
「ズルいってなんだよ」
「つーかお前も怪我してんじゃねぇーか。女がそんな傷顔につけてんじゃねぇよ。」

私も参加したかったと言わんばかりの凪の頬にも付いた掠り傷を一郎が指摘すれば、道端の小石に躓いたと返答。いやその小石って絶対ケンカ相手じゃねぇかと空却もツッコむ。

『舐めときゃ治るよ。一郎、その女が女がってやめなよね、殴るよ。』
「あ?何でだよ」
『あんたそんなのも分かんないの?』
「おいおいケンカすんなよてめぇら。本来無一物。常識にとらわれんなよ、一郎。その人の成りを見ろってな。コイツはそこらの女と一緒にしてやるな、女がかわいそうだろ。」
『味方と思いきや今ディスったよね!?』
「なるほどな、女じゃなくて凪っつー生きもんだっつーなら納得した。」
『一郎やっぱり殴る。』

わーわーと騒ぎながら街を闊歩するのだが笑ったりする度に切れた口端が痛むのか時折顔を歪める空却と少しびっこひきながら歩く一郎に見かねてコンビニの前に二人を座らせる。

『何、相手そんな強かったの?』
「いや、全然。」
「ただただ数が多かっただけだな。」
『なんだ卑怯者集団か。』

ごそごそと鞄を漁ってポーチを取り出す凪。そのポーチにはテーピングや消毒液、絆創膏などが入った簡易の救急箱だった。

「いってぇ!」
『男が泣くなよ』
「泣いてねぇし!つーかお前が女だ男だ言うなっつーのに言うのかよ。」
『私はいいのー』
「暴君かよ。」
『空却には言われなくないね。はい、終わり。次一郎。』

テーピングを小さく切って砂時計のような形に切れ込みを入れたものを消毒し終わった傷口に貼る。これで傷が無駄に開かず痛みはマシだろう。その他も小さな傷を消毒したり絆創膏を貼ったりして終わるとさんきゅー!とお礼を言った空却はコンビニの中へ向かう。次に一郎をバリカーに腰掛けさせて足を見る。

『うわ痛そ。』
「そーでもねぇ。」
『へぇ。』
「い"っ…!」
『痛いって、素直に言っていいんだよ。』
「言葉と行動が合ってねぇ、思いっきり曲げやがって…」
『素直じゃない一郎が悪い。』

足首が腫れており、きっと捻挫をしているであろうそこを確認するように凪が容赦なく動かして走った痛みに声を漏らす一郎。靴と靴下を脱がせ、くるくるとテーピングを巻いていく凪に次第と文句は引っ込んだ。

「うめぇな。」
『そりゃ慣れちゃったもんね。』
「…そんなもん慣れるもんじゃねぇのにな」
『ほんとそれよね〜。でも仕方ない。』
「……」
『よしっ!流石元バスケ部員のテーピング!』
「バスケやってたのか」
『中学ん時ね。』

テーピングを巻かれた足に靴下と靴を履き直した一郎がまたお礼を言う。それに満足げにどういたしまして、と凪は笑った。

「ほらよ」
『あ、空却!ありがとー。』
「礼はちゃんとしねぇとな。」
「俺もなんか買ってくるわ」


それから出てきた空却がミルクティーをくれ、一郎も何か買ってきてくれるとのことで治療代はちゃらにしてやろう。そう凪が言えば治療費取るつもりだったのかよと二人がつっこんだ。


*ケンカと手当て*



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