hpmi 4 FP
□野良猫の隠れ家
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そこからはひたすら仕事を終わらせることだけに集中し気がついたら家の前だった。
鍵をとりだし、鍵穴にさそうとするも、中々視界が歪んで差せない。泣きたくない。死ぬほど好きな訳じゃなかった。所帯をもちながら私に手を出した。そんな間抜けだったか、私は。悲しいんじゃない。惨めなんだ。
必死に耐えている私とは裏腹に勝手に涙はボタボタと廊下の床の色を濃く染める。噛み締めた歯の隙間から嗚咽が漏れていく。
安定している職についているからなんだ。不倫だったらそれ以前の問題じゃないか。人を見る目がないことにうちひしがれる。
「花?」
後ろから声をかけられる。今はだめだ。数ヶ月音沙汰なかったくせになんでこんな時に限ってくるのよ、あんたは。
「泣いてんのか?」
『ううう〜っ…』
「……」
返事の代わりに呻き声しか出せない私を彼は無言で抱き寄せた。私は胸元に顔を埋める形になり、ヤニが微かに香った。
頭をぽんぽんと撫でられる。なぐさめてくれてるの?彼の熱い体温にさらに涙が溢れた。動けない私の手の中から鍵を抜き取り、代わりに開けて一緒に入る。
「話聞くぐらいなら俺にもできるぜ」
彼のその言葉を皮切りに私は泣きじゃくりながら事のあらましと男への罵詈雑言を吐き散らした。
『人のこと!馬鹿にして…!!!くやしいっあのクサレ****野郎!!』
「っ…はは!」
『なっ、なにっわらってん、のよ!』
「いや、言うねぇ、と思ってよ。」
『言ってやらないとっ気がすまなっ』
ズズッと鼻をすすればコートの袖で私の鼻をぐりぐりと拭ってくる。
『汚れる…』
「どーせここで洗って貰うし」
『……あんたはそーゆーやつだったわ』
呆れた視線をおくれば、目前に整った顔があった。
唇に触れる感触に、は?と思ったけど段々と深くなっていくそれに私は身を委ねてしまう。
せっかく昼休みに直した化粧も、涙でグシャグシャだろうに、よく手を出したな。唇が離れたと思えばティッシュを手に取り鼻をかむ。
流石にムードもクソもなくなっただろう。
と思ったが、ゴミ箱にティッシュを入れたその腕を掴まれベッドに連れ込まれる。
『んっ…』
ビジネススーツのスカートからシャツを引っ張りだし、裾から手が忍び込んで私の肌を撫でる。
ああ、帝統にはムードなんてお洒落なものいらないのね。画して、昨日あの不倫男と出掛けるからと身体のお手入れは済んでいる。
何故彼と身体を重ねているのか。そんなの、彼のいつもと違う欲に濡れた瞳で射ぬかれて私の中の熱を膨らまされどうでもよかった。
悔しくて溺れた