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□カランコエ(一郎連載@)
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リクエストは受け付けません。
ということで。仕事終わりなもんでいい時間なこともあり、ちゃちゃっとチキンライスをバターで炒めて卵で包む。
春ちゃん特製のオムライスだ。


─2.家族団欒─

並んだ黄色に、ケチャップこと赤いペンでいちろ、じろー、さぶろーと書いていく。最後にハートマークを欠かさずにね。

一生懸命文字をこそこそと書いていると、
ただいまー!と声がする。

ダイニングに入ってきた一郎に、お帰りと声をかけるじろさぶにぎゅんぎゅんと可愛さを感じつつ、手を洗って拭きながら私も顔を見に行く。
一郎も笑顔で弟たちの出迎えに答えている。

『一郎、おっかえりー!』
「おう、来てたのか。」

くしゃりと私の頭を一撫で。
私より大きい二郎より、もっと大きい一郎。
一郎に対しては、私より若い男の子なのに可愛い弟という感覚はない。
私が呑気に学校に通っている頃から、一郎は弟二人を守るためにしっかりしてしまっているからか。

『新刊色々買ってきたよ、ご飯食べたら読も。』
「おお!今日発売日だったもんな、本屋行く暇なかったわ。」
『私もまだ読んでないから、順番にね!』

そう、可愛い弟というよりも、一郎はオタクの同志感覚が大きい。

『さて、春ちゃん特製の手料理だぞ!
皆座って〜。一郎は手を洗ってきて〜。』

テーブルをみんなで囲む。並べられたハートマークの散らばったオムライスに、三兄弟から呆れた顔を向けられる。

『なに!?私の愛情うけとりなさい!!!』

なんだかんだ照れ笑いを浮かべる三兄弟に心臓病を発症しながら手をあわせて食事を始める。

「春姐、おいしいよ。」
「姐ちゃん、ありがとう。」

……胸を押さえてテーブルに額を押し付けると一郎からやめろと怒られた。仕方ないじゃないか、原因は君の弟たちだぞ!

『私いつかブラコンが死因になりそう…』
「俺の弟だっつの」
『いーじゃんかよー。私の兄弟でもいいじゃんかよー。』

実際に私には兄弟はおらず一人っ子。 実の弟じゃないのにこの可愛さって……実際に妹弟がいたらすでにこの世にいないかもしれない。

「またバカなこと考えてんだろ。」
口に出していないのに何故バレたし。
『解せぬ。』
ハハッと笑う一郎。笑顔が眩しいです。
その笑顔いくらですか??

「姐ちゃん、洗い物は俺がするよ!」
『ほんと?ありがと。』

よしよしと二郎をなで、お願いする。
ニコニコと身長差があるため少し屈んで受け入れてくれる二郎かわいい。可愛さの極み。

ソファーに座り、一息つく。
さぁて、今日のもう1つの楽しみである新刊のビニールを破る。横に一郎も座り、私の買ってきた新刊を物色する。前はストーリーがどこまでだった、今度アニメ化する、などと会話もそぞろにお互いに口数が減り物語にのめり込む。

「いち兄、春姐、お風呂あいたよ〜。」

ぬっと覗き込んできた三郎に、はっと夢の世界から現実に戻ってくる。声だけだときっと気づかなかっただろう。

『一郎。』
「ん?」
『疲れてるでしょ、先入ってきていいよ。』

一郎ものめり込んでいた様子で、声をかける。

「でも春も仕事終わりだろ、先いいぞ。」
『え〜家主より先に入るのはな〜』
「今まで気にしたことなかっただろ。」
『そ、そんなことないしっ!』
「とか言いながら、それもうちょっとだから読み切りたいんだろ?」
『!!?』

何故わかった!と目を丸くして一郎を見るとまた笑ってばーか、と頭を撫でられる。立ち上がった一郎は脱衣所に向かっていった。

ふふ、と横で三郎が笑ってる。
『さぶちゃん?バカにしてる?春ねーちゃん泣いちゃうよ?』
「いいえ、仲いいなぁって。」
『え!?何いってんの!?私、三郎とも仲いいつもりなんだけど!てか髪の毛まだ濡れてるじゃん、私に乾かせなさい。』
「突然。」
『さぁ、私の前に座りなされ。』
「強制。」

ソファーから立ち上がり、三郎をソファーに座るよう促す。笑いながら、言葉と裏腹に素直に私の前に座る末弟。ふわりとドライヤーをかけていく。
さらりと細く柔らかい猫っ毛の艶やかな黒髪。
三兄弟はみんなこの髪質みたい。
私は真っ黒ではなく少し色素が薄いのか、濃い茶色。くせ毛で少しくるんとして、雨の日は最悪。
綺麗な髪に羨ましさを感じながら、指通りの良い髪を乾かしきる。

『終わったよ。』
「ありがとう、春姐!」

クルクルとコードを直していると、三郎が振り返る。
「ねぇ、春姐。明日休みだからうち来たんだよね?」
『そうだよ、2連休!やぁーっと休みだよ。』
「じゃあ明日はなにか用事ある?」
『いやー、特に予定は未定。どうした?どっかいく?』
「うーん、みたい映画もあるし、最近新しいボードゲーム買ったんだ!」
『そうなんだ。』

ニコニコ喋る三郎かわいい。
一生懸命喋る三郎かわいい。
かわいいが絶好調だ。

『じゃあ、一郎と二郎がいて人数がいたらボードゲームして、二人に予定があるなら私と三郎で映画いこっか。』
「うんっ!別に二郎は居なくてもいいけど…」

「おい、三郎!聞こえてんぞ!!!」
「は?いたんだ?何、明日居るの?」

少し距離のあるところから声がする。ダイニングから二郎がやってきた。喧嘩する二人も可愛い。言い合ってる二人をニコニコと眺める私。なんだこの可愛い二人。
と、その時。ゴン、ゴンっと鈍い音がする。
一郎がお風呂から上がったみたいだ。

「兄弟仲良くしろっていってんだろが!」
『でも喧嘩するほど仲がいいってね。』
「「誰が!!!」」
「春…」

なだめようとしてたところに私の余計な一言に一郎から批難の目を向けられる。ペロリと舌をだして、次は私がお風呂を借りるために脱衣所に向かった。








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