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□カランコエ(一郎連載@)
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ザァ、と熱めのシャワーを頭からかぶる。
山田家の3人と出会ってからもう3年が経つ。



─3.隠す想い─



三郎は、一郎には敬語使うけど私には使わないぐらい仲良くなっている自覚がある。小学生だった三郎が、もう受験生だなんて。
最初は逆毛をたてて威嚇する猫みたいに警戒されていた。今でもすこしクールだけどゴロゴロと喉を鳴らしてくれる。
野良猫がなついた感覚。これ本人に言ったら拗ねられるやつ。でも拗ねた三郎もみたi…やめよう。



二郎は、出会った頃は中学生で、すでに不良で最初は少し怖かったなぁ。
でも基本は人と関わるの好きなんだろうなって感じで、出会った当初より体は大きくなったものの、もはや中身はワンコ。やっぱり恥ずかしさもあるのか女性との関わりかたがまだ馴れないみたい。
中身はおっさんだから、気にしなくてもいいんだけどなぁ。。。
まぁ高校生っていう年齢的なこともあるだろうし、もう少し私が年とってババアになれば仲良くなれるかな?



一郎は、よくわからない。
一郎にとって私はどんなポジションなんだろう。
私は前述したように、オタク仲間感覚。親友?


でも、友達以上に想う気持ちも正直ある。


二郎と三郎を支える一郎。弱さを見せられない大黒柱。
あの二人の盲信の様子を見てても、強くあるべきと課せているような。
じゃあ、一郎はどこで弱音を吐けるんだろう?
弱音吐くんじゃねぇ。一郎がよく弟たちに言う言葉だ。
私は、弱音は吐いたっていいと思ってる。
もちろん、やってもないのに諦めるような弱音ならどうかと思うが、弱い所がない人間などいないからだ。


吐き出せる場所に、私はなりたかった。





身体を清め、ちゃぷんと湯船に浸かる。
はぁ〜っと深い息が自然と漏れる。
疲れが息にのって出ていく感覚がして力が抜けていくのが分かる。


どれだけ3人と仲良くなったとしても、私はあくまでただの他人。
彼らの事に口出しすることはない。
会えるときに会って、他愛のない会話をして。
可愛い弟たちに愛を注ぐ。
彼らに、日常を与える。
どんな大層な立場だ、と乾いた笑いが漏れた。

ザパッと湯船から上がる。






タオルを首にかけ、リビングに戻る。
ソファーには横になった一郎が。
胸の上に開いたマンガがのっており、静かに寝息をたてていた。

すぅ、と力のぬけた一郎の表情にどこかムズムズする。さら、と前髪を少し掬い上げる。三郎と似た髪質のそれはすぐに指の隙間を通りすぎていく。

高校生だった彼は、萬屋をたちあげてどんどんしっかり者になった。高校生の頃は生意気さもあったが今ではすっかり好青年だ。

こう寝顔を見ると、まだ少し幼さがちらつく顔立ち。

『可愛い。』

でも私にとって、今まで出会った誰よりも格好いい。
つ、と左目の涙ボクロをなぞる。その際、睫毛が震えた。流石に起きたかな?とじっと閉じられた瞼を見つめるが、それは開かれることはなかった。

仕事で疲れてるんだろう。
だからといってソファーで寝かしておくのもどうか。
私の山田家での寝床でもあるんだぞ。

『いちろ、』
「ん…」

肩をゆさぶり、声をかける。少し眉間にシワをよせ、掠れた声が漏れる。
なんだ、その色っぽい声は。おねーさんを誘惑してる?ってバカ。流石に自分でつっこむわ。

『いちろ、ベッドいきなよ。風邪引くよ』
かろうじて瞼は開いたが、ぼーっと天井をうつろな目で眺める一郎にベッドへ行くよう促す。
が、ゆっくりとまた瞼は閉じていった。

いや、わかる。ピークに眠たいときって起こされても眠たすぎて動けない時ある。わかる。

ふむ、と私は諦め、いつもの私用の毛布を一郎にかける。さて、私の寝床がなくなったわけだ。うーん、と腕を組んで考える。

『いちろ、今日はベッド交換で。おやすみ。』

ちゅ、と天使の額にキスを落とす。
起きれないぐらい眠いのなら、意識なんてないだろう。





一郎の部屋に向かい、ベッドに潜り込む。
あー、一郎の匂いが充満してる。

『こりゃ、いかん。』

と言葉で発しながら行動は裏腹にスーっと肺一杯に空気を吸い込む。なんだか、ほっとする。
私も朝から仕事であったため疲れていたのか、すぐに瞼が閉じていった。







2019,9,21修正
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