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□カランコエ(一郎連載@)
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二人には私が来てることは伝わってないらしい。
食事もグラタンは最後にもう一回火を通してチーズをかけてオーブンにいれたりパスタはソースを絡めるだけとなっている。さぁて、あとは帰ってくるのを待つだけ。



─12,愛しさの行き場がない─



『どどどどどどうしよう』
「何が。」


冷静なツッコみありがとう。いやだって二人に伝わってないとかもしかしたら放課後友達と遊びにいったりするかもしれない。一郎も含め、彼らの世界は広いはずだ。

職場と自宅、ここしかない私とは違う。私だって学生の頃は外のセカイに興味を持ち 沢山のセカイを見てきた。
懐かしいなー、若かりしあの頃。


まっすぐうちに帰ってこないのでは、と不安を一郎に話すと あー、と頭をかきながら目をそらされた。何。


「今日は俺が休みなのは知ってっから、まっすぐ帰ってくるんじゃね?」
『まじか。』


おっと声に出たわ。まじか、あの二人はどんだけ一郎好きなんだ。流石、一郎ラブラザー(再使用)
まぁ、そういうことなら納得できたし安心して帰りを待つことが出来る。
それに遅くなるなら必ず連絡が来るそうだ。三郎はまだ中学生だしわかるけど、二郎…その見た目でちゃんとしてんだと少しきゅんとした。(ん?



そろそろかな、という時間には玄関に神経を立てはじめる。ガチャリと鍵を回す音が聞こえ、私は玄関に足音を立てながら向かいそのまま扉を開いた弟に飛び付いた。


『おかえりぃぃぃぃぃぃぃぃぃ』
「え!は、なに、春姐!?」
『ひさしぶり さぶろー!ひゃー頬っぺたちめたい〜!』
「ちめたいって何だよ。ただいま。」


久々に見た三郎はマフラーとイヤーマフでもふもふしてる、可愛い。冬場のせいか少しかさついた頬は寒さで赤くなっている。その頬を両手ではさんでむにむにと温めているとジャマ、と払い除けられた。このツンなとこも可愛い。可愛さにやられている私をほったらかして一郎にただいまと挨拶をしてマフラーをほどいていく三郎。


制服姿可愛い。学ラン正義。ああああ着替えちゃうのね名残惜しいけど私服も可愛いからなんでも許しちゃう。私の熱視線を浴びている三郎からのお返しは冷たい目線でした、ありがとう。


着替え終わった三郎はなんだかんだ私に寄ってきてくれた。デレが沁みます。ソファーに座っている私の足元に背を向けて三郎が座っており、その柔らかい髪をいじる。


「体調はもう大丈夫なの?」
『もうすっかり良くなったよ〜。もう、さぶろに会いたくて会いたくて会いたくて堪らないのに仕事と病気に憚られてもう死ねって暗に言われてるのかと思った。』
「ごめん、ほとんど何言ってるかわかんない。」
『そう?簡単に言えば三郎可愛い大好き愛してるってこと。』
「ばーか。」


三郎から最近の流行っているボードゲームや学校生活の話を聞きながら二郎の帰りを待つ。なに、プロポーズフレーズを作るボードゲーム?買ってくるからやろう。私山田家に捧げると考えながら作るから優勝間違いなしなんだけど。と真顔で伝えると彼は振り返ってかなり厳しい顔を向けてきた。

おかしいな、愛しい。なんだその顔は、とこちょこちょと後ろから脇腹を鷲掴んでじゃれていると、ドアから鍵を開ける音がする。三郎をこそばしている手に力が抜けた。わぁ、蹴られた!


軽い抵抗の蹴りであり、そんなに痛くはないけど大袈裟に痛がった振りをみせて玄関に向かい、三郎同様に扉を開けた彼に抱きついた。


『お帰り、ジロー!さぶろーがいじめる、助けてー!』
「わぁ、姐ちゃん!?」


勢いよく飛び込んだのに、ぽすりと受け止めてくれる二郎に男らしさを感じた。ニット帽かぶってるんだけどなに、かわいい。二郎は帽子がなんでも似合うね。


『冷気連れて帰ってきたね〜、さむっ!』
「ちょっと雪がちらついてんぞ。」
『え!雪!積もりそう!?』
「いや、水っぽいから溶けて積もりはしないんじゃね?」


確かに、ぴょこんと跳ねている襟足の髪をつつくと濡れているのが分かる。雪。雪かぁ。積もったら遊びたい気持ちもあるけど、帰りの電車が心配だ。

むにーっと二郎の冷えた頬っぺたも私の手のひらで温めて、ご飯準備するから手を洗っておいでと促した。



夕食の最後の仕上げにとりかかり、食卓を囲む。二郎の学校での話や一郎と三郎も含めて今期のアニメの話で盛り上がる。

『持久走なつかし〜!』
「毎年やってることだけどよ、まじでさみぃしおんなじ所グルグルと走らされて何になるんだって感じ。」
『分かる分かる。学校によってはマラソン大会だよね。』
「どっちもどっち〜」
「いいじゃねぇか、体力ついて」
「兄ちゃん…」
「頭はついてこないんだから体力だけが取り柄でしょ、文句言うなよ。」
「さぶろぉ、てめぇ!」
「あー、やだやだ。すぐそうやって逆上してさ」
「てめぇなんてひょろひょろで吹いたら折れそうな軟弱野郎じゃねえか」
「なんだと!?」
『まーまー。でも確かに学生終わったらそんな走ることないし衰える一方…あああもうババア…』
「そんな俺と変わんねぇだろ」
『いや!もう腰が!看護師の仕事、腰の負担マジでやばいから』


騒がしい食卓。
どうしたってここの居心地が良すぎて、
離れられる気がしない。






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