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□カランコエ(一郎連載@)
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足りてない。足りてないんです。
仕事中にわーにんぐと警告がでるぐらいには。




─19,山田補給─


昨日は夜勤明けで、今日は休み。しつこい報道陣から助けられた日からしばらく経ち、大忙しだった日々も少し落ち着いた。

な、の、で!
私は今!イケブクロにいます!
いやぁ、テンションあがりますね。

「姐ちゃん!久しぶりっ!」
『二郎〜久しぶり〜!』
玄関を開けて迎え入れてくれたのは二郎。ああ、尻尾が見える。なんだこの可愛いいきもの。大丈夫?ホントに三次元の住人?わしゃわしゃわしゃーっと私より随分高い位置にある頭をなで回す。

「やめてよ、姐ちゃん!」

セット崩れんだろ〜と非難の声をあげるも顔は嬉しそう。

「セットなんて、大してしてないだろ。」

ピュッと飛んで来る毒舌。
「なんだと、三郎!?」
「寝癖直しただけにしかみえないけどね〜。」
「んなわけねぇだろ!?」

うんうん、来て早々このケンカね。ちょっとしたことでも二郎のこと構いたいんだよね、三郎ちゃん。わかるよ、反応可愛いもんね。

「春姐、後半声に出てるんだけど。」
『あら。』
「ね、姐ちゃん…」
「と言うか、僕が二郎を可愛いなんて気持ち悪いこと言わないでほしいよ。」
「おめーは全っ然かわいくねーよな、ホントに!思われてても気持ち悪いけどな!」

「おめぇら、またケンカしてんのか?」
「一兄…こんな低能相手にケンカするわけないじゃないですか!」
「三郎、てめぇ!」
「はぁ〜。三郎、お前は兄貴をバカにするんじゃねぇ。二郎も、春を迎えに出たんなら早く上がってもらえ。」

そうだったそうだった。迎え出てくれた二郎が可愛すぎてここ玄関だったの忘れてた。ふと、一郎の視線が弟たちから私に向かう。

「おかえり、春」
『たっ、ただいま!』


なんだ!?久しぶりの一郎、イケメンすぎません?知ってたけど!!!ニカッと笑うその笑顔、だめだキラキラ三倍増し。直視できない。眩しすぎて目が潰れるのが先だ。


「昼飯は?」
『みんなは食べたの?』
「これからだ。春の分もあるぞ。」
『やったー!実は期待してましたっ』


現金なやつめ、と今度は私がわしゃわしゃされる番。ううーん、私の方がお姉さんなんだけど。ふむ、と思案する。一郎は無理して"お兄ちゃん"をやってるわけではないと分かっているが、それでいいのだろうか。

『ご飯ありがと、一郎。』

背伸びをして、目一杯腕を伸ばして。わしゃわしゃとお返しを食らわす。豆鉄砲をくらった鳩のようにキョトンとした一郎が、次の瞬間にははにかんでおう、と笑った。私は満足して頷き、お皿を並べたりと昼食の準備を手伝うのだった。




賑やかで、笑顔もケンカも絶えない食卓。



バトルが終わってから、彼らもメディアに取り上げられていた。もちろん雑誌も3冊ずつ(観賞用、保存用、切り抜き用)買ったし、切り抜いたものはスクラップブックを作ってキレイにまとめておいた。
メディアで取り上げられ、もちろんバトルの中継も全国放送だ。
よくよく考えたら一郎たちは更に有名人に。
近いのに、遠い存在になってしまったようにも感じてしまう。


「兄ちゃん、俺明日弁当いらないからね」
「ん?そうなのか。」
『授業昼までなの?お姉さん仕事やすんで遊びに行っちゃう?』
「違うよ!てか仕事は休まないで!?」
『ええ〜二郎たん優先したい…』

ブーイングを送っていると、ぽかりと軽く一郎に小突かれる。弟が可愛いんだもん、しかたないじゃないか!と抗議の視線を送るも一郎はスルー。くそう、腕をあげたな?

「…女子が、弁当くれるんだけど、食いきれなくってさ。」
『なっ!?』
「そーかそーか、二郎人気モンだなぁ。」
兄ちゃんは嬉しいぞ!とどこかズレた発言をしている一郎。
『待って!?人気者とか!それ以前に!?おモテになっているのでは!?』

うちの可愛い二郎がとられる…!?と騒ぐと、二郎はさらにあたふた。あたふたしてる二郎も可愛い、ありがとう、神様!!!

「折角くれるのに、残すのも悪いから…」
『二郎やさしー!さすが二郎たん!可愛い!彼女できたら紹介してね!!!』
「かっ、彼女なんて!ねーよ!!」

「可愛いはおかしいでしょ。」
『ん?三郎もかわいいよ?』
「そういうこと言ってるんじゃないんだけど。」

相変わらずツンツンしているなぁ、三郎くんよ。
…はっ!!もしや!?

『三郎たんまでモッテモテのぎったんぎったんに!?』
「はぁ!?なにそれ!?バカ??」
『否定しない!?否定しないってことは…ああああ中学生は早いよぉぉぉ、まだ可愛いうちの三郎たんでいてくれよぉぉぉぉ。』


あ、まって。ガチで引くの止めてもらえません??傷つく。傷つくから。ライフ ガンガン削られてますから。


「ははっ!俺の自慢の弟たちだからな!もちろん、彼女ができたら俺にも紹介してくれよな?」


好かれて当たり前だと言わんばかりの一郎もかわいい。可愛いが過ぎる。なんだこの兄弟。生身の凶器だわ、もはや。



…ていうか、一郎も、もちろんモテてますよね。
ううーん。元々有名だったし、この顔面だし優しいし頼りになるし、モテているのは知っていた。いやモテてないはずがない。好きにならないわけがない。
職場でも、寂雷先生の人気上昇っぷりを見ているので三人の人気の上がり様もすごいのだろう。
きっと私より美人で可愛げのある女の子を選び放題だ…
家庭的で、自覚なしに頑張りすぎてしまう一郎を包み込んでくれる、そんな女の子が。




私の中で、少しだけ、少しだけ不安が生まれた。







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