hpmi 1 BB

□カランコエ(一郎連載@)
27ページ/66ページ





今日は一郎が仕事で遅くなるとのことで、山田家の二男三男のために晩ご飯を作りにいくことになっている。

今日は久々に春ちゃん特製オムライスにしようかしら。そう考えて、今日は定時に帰れるようにカルテを書き込むのだった。




─27,レッツミッション─



「ん?なになに……はぁ!?」
「なんだよ二郎。」


携帯の通知音に気がつき、内容をみればまさか。
驚きの声を挙げるとうざったるそうにみてくる三郎。一緒に帰ってたとかじゃねぇから。たまたま帰り道に会っただけだぞ。

「依頼が同時に2つ!?しかも今からじゃねぇか!」
「はぁー!?どうすんだよ、これから帰っていち兄に頼まれたアニメの録画しないといけないのに…!もし間に合わなかったら…」
「「殺されちゃうよ!!」」


そう、すでに重大な依頼が俺たちには課されていた。かといって、依頼を断るわけには…

「っ!こうなったら やるしかねぇだろ!!!俺は特売セールのおつかい!」
「僕は迷子の子猫の捜索!」

「「絶対おくれんじゃねぇ(ない)ぞ!」」

その言葉を皮切りにそれぞれ目的地に走った。


スーパーにつき、特売の卵を探す。惣菜の方か?急いで惣菜売り場を抜けると、そこは戦場だった。


なんだこれ、夢か?このスーパーにこんなに人が集まるの初めてみたぞ。思ったより人が多く、前に進もうにも肩を押し返される。

「ぅ、おっ!!」

人波に流されそうになるが、脳裏に浮かんだのは小馬鹿にしてくる三郎の顔だった。アイツなら、子猫の捜索をなんとかやりとげんだろ。んで、俺が達成できなかったら……

沸々と燃え上がる対抗心。アイツには負けらんねぇ。兄のコケンにかけてな!!!




***────***




依頼者から送られてきた迷子の子猫の写真を片手に、周囲の人間に聞き込んで捜索の当たりをつける。

こういった足で探すのは正直僕に向いてないけど今から帰って子猫が写っているかわからない防犯カメラをハッキングするよりかはこっちのほうが効率は良さそうだ。


人探しならパソコンで簡単に済ますものを…!

少ない情報量に冷や汗がでる。間に合わないんじゃないか…?そんな不安に駆られるが、頭を振ってその考えを霧散させる。考えるより行動だ!



「ああ、なんかあっちで見たような…」
「本当ですか!協力ありがとうございます!」


路地裏でみたとタレコミ。今はその少ない情報ですら貴重だった。

「くそ、どこだよ…」

こうなったらヤケクソだ。ゴミに寄っていってるかもしれない。手当たり次第に積まれたゴミを探してその付近に居ないか駆け回る。

「あー!もう、最悪…!」


パラパラと頭上から振ってきた雫に嫌気がさした。
その時、視界の端にゴミの影から伸びるあの尻尾が映った。





「っ!!!ぬいぐるみじゃねぇか!!!!」



腹の底から声が出た気がする。




***───***


定時にあがり、オムライスが出来上がる頃には二人とも丁度帰ってくるかと思っていたが、待てど暮らせど帰ってこない。テレビの報道番組のお天気キャスターが今から雨が降ると言って東京の黒い雲に覆われた空を映した。


うーん、と悩んだ末に二人に連絡を入れる。
二郎と三郎、二人とも出ない。むむむ…。
放課後は遊びにいっているのか。寂しいな。
二郎に電話を再度かけると、なんとか繋がった。


〈姐ちゃん、どうしたの?〉
『いやぁ二人とも帰ってこないからさぁ。』
〈え!姐ちゃん来てんの?〉
『そーそー。春ちゃん特製オムライス作って待ってるよ〜』
〈あー、今俺たち依頼受けてて…〉
『そっかぁ、そうなんだ〜。』
〈俺はあとレジに並んで持ってくだけだから、三郎がどうか…〉



三郎が依頼を受けている付近の情報を二郎からきいて、傘をもって家を出る。もしかしたら三郎も依頼を終えてるかもしれないけど。



──────



うーん、この辺だと思うんだけど…キョロキョロと見渡すと大きな木の下に人だかりが見えた。そっちに寄っていくと、その大きな木の枝からか細い猫の鳴き声が。


『え、やだ、うそ…!!!』


あ、と思ったその瞬間。突風に揺らされた枝からこねこが落ちる。


が、その子猫が地面に叩きつけられる前に見慣れた黄色いパーカーと学ランの背中が見えた。そして人だかりから歓声が上がる。


座り込んでる三郎に傘を傾け声をかける。その腕の中には小さな子猫が抱かれていた。


『ナイスキャッチ、三郎。』
「え、春姐?なんで…」
『温かいご飯が待ってるぞ〜。子猫ちゃん引き渡して帰ろう、三郎。』
「、うん。」


無事に子猫を引き渡して帰路についていると、二郎とも合流した。なんとか卵を勝ち取ったは良かったがレジに長蛇の列がなされていてそのあと卵を引き渡して来たみたいだ。


「俺の圧勝だな。」
「はぁ!?どこが勝ちだ、僕の方が一歩早かったね」
「俺の方が圧倒的に早かったぜ、3馬身差認めろ!」
「物分かりの悪いヤツ。僕が先だね、諦めろ!」
「調子ノンなこのガキ!」
「はいはいはい、二郎だってガキだろ?」


また言い合いになってる二人に笑みがこぼれる。


『ざーんねん!夕飯作りのミッション達成は私が一番でした!』


はっはっはと笑えば、ずりぃぞと喚く二郎と突然参戦しないでくれない?といちゃもんつける三郎。どう言われようが私が先!


『一郎からのミッションコンプリート!拍手なさい、弟たちよ!』
「「あ」」
『ん?』

私の言葉に、顔を蒼白にする二人。思ってた反応と違うぞ!?どうした二人とも!
ギギギギと錆びた鉄のようにぎこちなく顔を合わせる二人。



「アニメの録画…」
「忘れてた……!!」




落ち込む二人の肩と背中を叩き、家に帰ってみてみるとあら不思議。録画がちゃんとされていました!


私が先週、オタクの布教心で勝手に毎週録画にしていたのが意図せず功を奏し、弟たちの魂の救済ができたみたい。めでたしめでたし。











bb's cityコンセプト。前のドラマトラックは踏まえてません。



次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ