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□カランコエ(一郎連載@)
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天気は良好、日差しも暖かい。絶好のお出かけ日和だ。って言っても行き先は全て室内なのだが。今日は一郎とお出かけをする。行き先は3つ。メイドカフェで軽食を取り、本屋に行って映画を見る。そう。何を隠そう、本日はオタ活動オンリーデイ!!!
─36:萌え萌えキュン─
まずはやって来たメイド喫茶!一郎はあまり行かないみたい。可愛いメイドさんにご奉仕シチュは嫌いじゃないとのことだけど。私も推しがいて通っている訳ではなく、たまーにこうしてかわいこちゃん探しに来るくらい。
「おかえりなさいませ、お嬢様、ご主人様!
…って、え!?あ、いや、しっ失礼いたしましたっ!こちらにどうぞ〜」
可愛らしいツインテールのメイドさんが迎えでてくれた。にこやかにお決まりのセリフを口にしたが、一瞬驚きの表情を浮かべる。一郎に気付いたのだろう。それでもちゃんと気を取り直して席に案内してくれた。なんて仕事熱心なんだ…。2人掛けの席に案内され、指名について聞かれる。そう、私はロング丈のポニテクールメイド推しな私はちゃんとリサーチ済み。
『ユウちゃんで!』
「決まってたのかよ…」
『ごめーん』
「ごめんっつー顔してねぇなぁ?」
一郎は笑って誤魔化す私の頭を小突く。メニューを二人で決めていると、美人系で細身のメイドさんがテーブルにやってくる。
「失礼します。ご主人様、お嬢様。メニューはお決まりでしょうか。」
『私はネコたんパンケーキ!』
「んー、じゃあ俺クマたんカレー…」
『がっつりじゃん。』
てかクマたんって。一郎のクマたんって超貴重では?は?可愛い。可愛すぎる。これラジオで言わねー!絶対言わねー!って言われるヤツ。でも言っちゃいましたよ、奥さん。ねぇ奥さん聞きました?地球が今萌えたわ。間違いない。
「ではお嬢様はネコたんパンケーキ、ご主人様はクマたんカレーですね。準備して参ります。」
しゃんと背筋を伸ばしたユウちゃんがお辞儀をしてメニューを通しに行く。その背中を見送った後に一郎のほうを見る。すると勝手に緩んでいたのだろう私の顔に怪訝そうな表情を浮かべる彼。
「んだよ?」
『んーん。可愛いなって。』
「メイドさんが?」
『…そう言うことにしておこう。』
「…俺か。」
ゲンドウポーズになる一郎に笑う。それから本屋で狙う新刊と、最近オススメのアニメやマンガ、ラノベをプレゼンする。
「このラノベがさ〜」
『え、なにそれ激アツじゃん』
「だろ?そんでこのキャラの決意決めて突き進んでいくんだけど」
『なるほどね…それでこのキャラとの確執が…』
「そうなんだよ!」
『ねぇ、この作品映画化するって知ってた?』
「え、まじかよ。」
『昨日発表でさ』
「うおー、見逃してたわ。いつ?」
『来春だって。新キャストがさ、』
「激アツ…!」
『でしょ!?』
そんなこんなで注文していたメニューが届く。
「お待たせいたしました。ご主人様、クマたんカレーでございます。お嬢様、ネコたんパンケーキでございます。」
「あざす。」
『ユウちゃーん!』
「はい、なんでしょう?」
『とーっても可愛くて美味しそうなんだけど…美味しくなる魔法かけてー!』
「……聞かなかったことにしてよろしいでしょうか?」
『だめー!』
「…っ、し、かたないですね…」
ツンとクールに接してたユウちゃんが動揺をみせる。きっとテンプレートなんだろうけど萌えるよね。
「…ご主人様もご一緒に。」
「お、れも か!?」
『あっはは、ユウちゃんさすが!』
「ハートを込めて、美味しくなぁれ。
せーの、萌え萌えキュン」
『早口!そして棒読み!!』
巻き込まれた一郎もしぶしぶハートを手で作り、ユウちゃんのあとに萌え萌えキュンと復唱する。一郎の声はかき消されそうな声量だったのにもかかわらず頬を染めている。メイドさんも一郎も可愛い。これよ。求めてたの。このためにメイド喫茶チョイスしたと言っても過言ではない。
『ユウちゃんはどこから来たの?』
「自宅からです」
『設定薄!じゃー血液型は?』
「未定です」
『塩!塩対応!』
メイドさんによってはどこからきたの?の質問に"〜星から"や、"いちごに乗ってきた"などコンセプトで答えてくれるらしい。さすがユウちゃん。クールにかわしていくぜ…。
そんなこんなで冷めない内に料理を食べてチェキを撮って(ちゃっかり)店を出る。出た直後の一郎はややげっそりして見えた。なぜ。萌えをもらったのに。三人で写ったチェキを折れないよう鞄の内ポケットにしまい本屋へ向かった。
◇
本屋というかいわゆるアニメ◯トに到着し、それぞれお目当てのものを手に取っていく。新刊を手に入れ、グッズコーナーに向かう。
え、まじか。ちょいまち。このキャラとこのキャラが同じ画角に居るだと…!?はーっ!推しcpもグッズ化されるほどになったか…。
感慨深くそのグッズを眺めていると、一郎がやって来た。
「あ、春、お前 多分こいつとこいつでcpだろ」
『え、やばい私の好み把握してるの?』
「なんとなく。」
『わかってるぅ〜』
「嫌でも傾向は覚えるぜ…多彩なジャンルのcp語られたらな…」
『やだ恥ずかしいんだけど。じゃあ一郎のこのアニメの推しはこの子でしょ?』
「まじか。当たってる。」
ふふんと得意気な顔をする。っていやまてまて。好きなcp傾向知られてるって結構致命傷なんだけど。そんなに私語ったっけ?あ、もしかしてSNSで垢間違えて投稿することもあったし…いや語ってるわ。確実に語り散らしてた。以後気を付けよう。
『って!映画の時間やばい!』
その推しcpが描かれたグッズを手にとり一郎を急かす。結局買うのかよと溢されたけど当たり前でしょー!
◇
なんとか映画に間に合い、入場者特典を受けとる。今回はトレーディング形式の特典だ。
「特典、後で見る派?」
『後で見ようと思いつつ先に見ちゃう派』
「んじゃ後にしようぜ」
『オッケー。見ようとする私を止めてね。』
劇場が暗くなり、ついに始まるとドキドキと期待に胸が高鳴る。壮大な音響と緻密な映像に、いつのまにか意識は2次元に飲み込まれていた。
あっという間に2時間が過ぎ、エンドロールに感動の息を漏らす。やばかった。ストーリーもそうだし、キャラそれぞれの魅せ方が最高に良かった。
映画ならではの背景の書き込まれ方が壮大で美しかったし、BGMも主題歌も作品にバチコン ハマってて良かった。
『あー、六条の女になってしまった…』
「高野ちゃんまじで俺の嫁…」
劇場に出てそれぞれ溢した言葉がこれだ。
オタクは作品を味わうと語彙力を奪われてしまうのが鉄板。
なんとも色気の少ないデートだ。
でもこれが、私たちの形だったりする。