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□カランコエ(一郎連載@)
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春の行方が分からなくなってから3日が過ぎた。元々受けていた依頼の合間に三人で春を探すものの、一向に情報は得られず何も進んでいない。

携帯が鳴り、依頼の話かと画面をみると心臓が止まったかと思った。電話の相手は探し求めている人物からだった。



─45,彼女の行方─



「おい、春、おまえ今どこに…!?」
『一郎。もう会えないや。突然、ごめんね。』
「ちょっとまて、話がみえねぇ!」


突然の別れの言葉に理解が追い付かない。そんなもん、納得できるわけねぇだろうが!


『しっかりごはん食べて、寝てね。ちゃんと弟たちのこと頼るんだよ?自分の心にも耳を傾けて、二郎と三郎だけじゃなくて一郎自身のことも守ってね。』
「春、そんな話してるんじゃねぇんだ…!」
『っ…、ごめん。ごめんね、一郎。』

まだ何も話せていないのに携帯の通話口からは無機質に切れた音が流れた。ふざけんな。どこにいるかも、なにをしているのかも聞けなかった。逆探知するにも前準備がなく難しいだろう。一応後で三郎に頼んでみるが…。

一体、どうなってるんだ。なんで突然あんな今生の別れみたいに言いやがって。絶対ぇ許さねぇぞ。最後に会ったのはいつだったか。オオサカに行く2日前、しばらく会えないからと家に遊びに来ていた。1週間ちょっと前で、行方が分からなくなる前日には早く会いたいと思いを深めたばかりだ。声だけが最後だなんて、いや、そもそももう会わないだなんてあるわけない。ぜってぇ連れ戻す…!



「兄ちゃん!」
「二郎、どうした?」
「三郎がなんか見つけたって!」
「ッ、わかった。すぐ行く。」


二郎と三郎の部屋に向かうと三郎はパソコンに向かっていた。

「姐ちゃんの情報見つかったのか?」
「ああ、情報…って言っていいのかはわからないけど」
「何でもいい、些細なことでもな。」
「はい、駅の映像なんですが…」


パソコンの画面に動画が流れる。そこにはキャリーバッグを引きながら歩く春が映っていた。しかし、物陰に隠れた後、その物陰から春は出て来ない。…どういうことだ?


「おかしいな…」
「そうなんです。それで更に詳しく映像情報を調べてみたんですが、ここを見てください。」


三郎が指したのは時刻だ。再度春の姿があるところから再生されその時間は刻まれていく。物陰に隠れた所。そこで時刻が飛んだ。


「これって……つまりどーゆーことだよ!?」
「これだからバカは。単純なことだろ。」
「ああ!?」
「映像が切り取られてるってことだな。」
「そうです!」
「なるほど…じゃあこの空白の時間に姐ちゃんが連れていかれたってことか…。」



人通りの多い所での連れ去りにも関わらず、誰も騒がずにニュースにもなっていない。公共の映像を加工できるって事は相手方は圧力を容易にかけられることが推測できた。その相手とはただ1つだけ考えられる。中王区だ。


だが、なんで春が中王区に連れていかれるんだ?まさか、俺たちのせいで…?いや、俺たちとただつるんでるだけじゃ大きな理由にはならねぇ。それなら今までだって何かアクションがあったはずだ。このタイミングで考えられるとすれば…オオサカでなにかあったか。



「よくやった、三郎。」
「いえ、これぐらいしかまだみつかってませんが…」
「でも事件に巻き込まれたのは確定したってことだよな」
「そうだな…とりあえず、春の職場に連絡がいってるか確認してみよう。」



そして春の職場に確認の電話を入れる。やはり出勤していないみたいだ。本人からは連絡はなく、代わりの人物から辞職の連絡がきたとのこと。本人からではないのでいたずらかと思ったが出勤していないので職場でも対応に困っているみたいだ。…研修先を聞いたが部外者に伝えることはできないと返答が返される。

、くそっ…!


" 部外者 "の言葉が俺に突き刺さる。けれど傷ついてる暇はない。今俺にできること、今後の捜査の段取りを頭の中で組み立てていく。彼女と同じ職場である寂雷さんに頼んで、内部の情報を教えてもらおう。病院同士の交流があるはずなのでアポをとってもらうのもいいかもしれない。仕事だろう、とメールを送り返事を待った。








〈お待たせして悪かったね。〉
「いえ、連絡あざっす。」
〈春さんのことかな?〉
「そうなんす。何か聞いてますか?」
〈申し訳ないけど先ほど知ったばかりなんだ。看護部で話題になっていたみたいだけど医局まで話は届いていなくて…一郎くんから連絡がきたと言うことは事件性がある、とみていいのかい?〉
「…どうなんですかね。調べてると連れていかれたのは分かったんスけど、本人からもう会えないって連絡がきたんです。でも、」
〈そうだね、彼女が突然そんな風にいなくなるとは考え難い。〉
「やっぱそうっすよね。研修が終わったタイミングなので、向こうで何かあったと思うんすけど中々情報が集まらなくて。」
〈分かった、そちらには私から聞いておこう。〉
「あざっす。」


何か分かったらすぐに連絡すると約束をもらい、電話を切る。ある意味、知り合いと同じところで働いてくれてて良かった。ツテがあればちょっとした情報の欠片でもかき集めることができる。自分の頭を下げるのも、遠くに探しに行くのも、あいつが戻ってくるなら安いモンだ。直接会って、納得できる言い分を聞くまでは俺は諦めねぇ。精々その言い分を考えてろ、春。






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