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□カランコエ(一郎連載@)
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あれから後輩からの引き留めの言葉や先輩から気にするなと声をかけてもらったりしながら、しばらく働く中でいい顔をしていなかったスタッフ達も声をかけてくれるようになった。改めて、その人たちに個別で謝罪の言葉を伝えればこちらも大人気がなかった、と和解することができた。

和解と、独歩さんや寂雷さん、田所さんなど後輩や先輩の温かい言葉や思いが私を勇気づけてここで働き続けると言う決断の背を押してくれた。



─52,小さなナイトパーティー─


そんなこんなで仕事を続けて推しのために必死に稼いでおります!推し。それは生きる糧である。と日々身に沁みて感じるのはやはり深刻な山田不足なうだからなのです。それを補給するべく、今日の休みは山田三兄弟とお買い物に出掛けます!どんどん、ぱふぱふー!テンション可笑しいって?それぐらい不足してるんです、仕方がない。


『こんにちはー!』
「あ!姐ちゃんおかえり!」
『ただいま〜』

山田家に到着すれば出迎えてくれる二郎。天使だ。頬が緩み目尻が垂れ下がるのが分かる。二郎とお揃いじゃん。じろちゃんのタレ目最高。

「姐ちゃん、声でてるでてる。」
『おっとじろちゃんの魅力的なタレ目の誘惑で口に出てしまった…』
「姐ちゃん、相変わらずだね。とりあえず上がりなよ。」
『それはこっちのセリフだよ、相変わらず可愛いなぁ。』


玄関先で最初の補給ポイントをわしゃわしゃ頭を撫でて堪能していると二郎が呆れて上がるよう促してきた。でも呆れながらもニコニコして手を引いてくれる二郎はやっぱり可愛い。

「春姐、早かったね。おかえり。」
『さぶきゅん…!』
「鳥肌がたつ呼び方しないでくれる?」
『ただいまぁ。でもハグ受け入れてくれるそんな三郎が好き…』
「受け入れてはないけどね。」

手洗いをしてからリビングに入るとソファーに座ってスマホをいじる三郎を見つけて後ろから襲いかか…ハグをする。あ、いい匂い。スマホを持つ手と反対の手で頬を押し退けられるもめげない私。


「はいはい、離れて。サービスタイム終了。これから先は1秒100円」
『仕方ないなぁ…』
「財布出さなくていいから!」


そっと鞄に手を伸ばせば冗談も通じないのかよ、とぷんすか怒る三郎が今日も可愛い。秒単位でもお金払うわ。


「春、おかえり。」
『一郎、ただいま〜。』

騒ぎ声を聞いてやってきた一郎。三兄弟のおかえりをコンプリートしてしまった。幸せってこういう小さな事の積み重ねなんだなぁと噛み締めて笑顔で返す。







やって来ました会員制の超大型巨大スーパー!!!はい、かなり大きく広いのが伝わったことでしょう。外国サイズの物を取り扱ったここは業者専用かと思うほどの高い陳列台がそびえ立ち、肉や魚の塊、パンの山から大容量の冷凍食品にお菓子、日用品や服まで品揃え抜群なのである。

「すっげー!!!」
「見て回るだけでも時間がかかりそうですね…」

キラキラと目を輝かせて声を上げる二郎と、歩き回らなければならない面倒くささと好奇心の二律背反を隠せない三郎。かわいい、好きだー!と叫びたい。そして、無言ではあるが巨大なカートを推しながらそわそわしてる一郎も可愛い。ありがとう、巨大スーパー。君のお陰で推しの可愛さが倍増した。このために年会費を払った甲斐がある…。

会員制であり、同伴が3人までOKなので私が会員で三兄弟が同行者として入場できるのである。決して安くはないがこの三人のはしゃぎ様を見れたならもっと積んでも後悔はない。私の口角も上がりっぱなしである。



「チャーハンの素…飯と混ぜて炒めるだけ…いいな。」
『買っちゃお。手間抜きしよ。』
「だよな〜!」
「いち兄!コーラがありますよ!」
「おう、買っとくか!」


ゆっくり歩きながら商品を見て回り、悩む一郎の背中を軽率に押しまくればカートにどんどん物が積み上げられていく。


「にーちゃんにーちゃん!!!みて、肉の塊!!!」
「うお、でけぇな!!!」
「二郎、順番に見て回るから大人しくしてろよ。恥ずかしいったらないね。」
「ああ!?んだと!?」
「そこらへんの小学生のほうが行儀がいいんじゃないか?」
「こんな広いのにワクワクしねぇはずがないだろ!」
「はぁ、これだから低能は…」
「お前ら、外でまでケンカすんな!」

二郎は駆け回って見て見て!と商品を持ってくるワンコである、可愛い。肉コーナーではブロック肉と既に味付けされたプルコギやヤンニョムを籠に入れる。パンコーナーでは有名なマフィンとクロワッサンの山を購入。

「あったかいのまで置いてんのか!」
『ピザおいしそ〜!』

あたたかいピザが陳列している。白く薄い箱に入ったそれは透明なフィルム越しにチーズとサラミを覗かせている。宅配ピザを頼むよりかなり安くボリューミーなそれは三兄弟を唆した。

「………」
『無言で籠に入れた』

そっと各々で選んだピザ3枚が無言でカートに積まれて兄弟の以心伝心さがツボです。推せます。それから鮮魚コーナーにさしかかり、肉のブロックに負けない魚の柵が並んでいる。

『サーモン!サーモン食べたい!』
「アヒージョもあります…!」
「よっしゃ、籠にいれろ!」
『やったー!』


それから特大サイズの洗剤やキッチンペーパーを入れたり靴下5足セットなど日用品を積んでお会計に向かう。量の割には安いのではあるが、やはり金額は大きくなった。


『おねーさんに任せなさい!』
「家のもんだからいいっていってんだろ!」
『私が誘ったし!私が会員だし!』
「うるせーきこえねー」
『わぁ一郎のわがまま!』
「わがままじゃねぇだろ…」


「兄ちゃんと…」
「春姐が言い合ってる…」

会計をどっちが出すかで言い合う私たちをぽかんと眺める弟二人。結局埒が明かないので日用品とピザと肉は山田家、魚とパンは私が出すことで何とか納得させた。推しに貢ぐことは譲らないですよ。彼も恋人に出させるようなことはしたくないのと、推しの概念まちがえんじゃねぇと半ギレだったけど。ごめんなさい。





帰宅して荷物を一斉にみんなで片付ける。すぐに食べないものは小分けして冷凍庫に詰め込んだ。

「やべぇ、冷蔵庫も冷凍庫もパンパン!」
「しばらく買い物に行かなくて良さそうですね。」
「楽しかったな!」

そして今日は買ったピザと、私のリクエストでサーモンの柵を切ってサーモンパーティーをすることになった。サーモンを薄く切っていき刺身、カルパッチョ、大きめに切ったのはムニエルにして、サイコロ状に切ってアボカドと和えてユッケ風にしたりとサーモン料理をどんどん作り上げていく。品数が増える度に感嘆を漏らす三人にちょっと得意気になってしまった。


「うまそ〜!」
「こんな洒落たもん、俺は作れねぇからな…」
『ちょっと、簡単なものなんだからあんまり褒めないで恥ずかしい…』
「春姐のご飯、久々な気がする…おいしそうだよ」
『ありがと〜!』


大きなダイニングテーブルに所狭しと並べられた料理がパーティー感を醸し出す。わいわいと騒がしく食卓を囲むのもこれまた幸せ。

「春、作ってくれてサンキューな!いただきます!」
『「「いただきます!」」』


こうして小さなパーティーが開催され夜が更けていった。




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