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□カランコエ(一郎連載@)
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仕事はなんとなしにこなしていく日々を過ごしていた。まぁ仕事の話はやめよう。そんなことより山田家との時間が有意義であり聞いてくれ。明日は4人でお出掛けです!!!



─53,行楽日和(前)─



残暑もだいぶ薄まり、朝夕は少し冷え込むが日中は日差しがぽかぽかと心地よい季節がきた。折角だし野外に繰り出そうとなった結果、トーキョー湾が見える公園へピクニックに行くことが決まった。二郎以外は割りとインドアなメンツであるため自然と触れる機会も少ない。日光浴で骨を強くしよう。一郎はかなり骨太で心配要らなさそうだが。明日のお弁当にサンドイッチを作るために買い出しも済んだ。さあ明日のために寝ないといけないのだが画面に向かって項垂れるオタク二人。

『ううう〜ここで決別なの〜?』
「やべぇ…ツラすぎる…。」

一郎と私でテレビ画面をみつめてストーリーの展開に固唾を飲む。朝が早いと分かっていてもアニメ鑑賞で夜更かししてしまうのはオタクの性です。今後の展開も見逃せない、と語り合い深夜そこそこに眠りについた。




朝、山田家は騒がしく始まる。夜更かしした私たちよりも遅く起きてきたのは二郎で、それに対してチクチクと毒舌で攻撃する三郎。

「あれだけアラームが鳴ってるのに起きないなんて一体どんな神経してるんだか。」
「うるせぇ、寝坊してねぇんだからセーフだろうが!」
「スヌーズ何回鳴ったと思ってるんだよ?」
『まぁまぁじゃれるのはそこまでにしてサンドイッチ作ろうよ。』
「「じゃれてねぇ(ない)よ!」」


仲良いことはよきかなよきかな。

『食材は切ってるから、自分の好きなの挟んでね。』
「俺ハムとトマトとチーズ!」
「僕はレタスとエビとマヨネーズにしようかな。」
「二郎、野菜もっと入れろよ。」
「わ、わかってるよ兄ちゃん…」


出掛ける前からこんなに楽しいことある?いやない。野菜の水分が漏れないようラップでサンドイッチを小分けにする兄弟が愛おしい…。


『唐揚げもスライスしてるよ』
「まじか、最高じゃん。」
『はい、味見。』
「ん。」


スライスした一枚目を摘まんで一郎に差し出すと、少し屈んで私の指先から直接口に入れた。まじか。手にとられると思っていた私は硬直するも彼はあっけらかんと旨いな、と言いながらサンドイッチに唐揚げとオニオンスライスとタルタルソースを挟みだした。

弟二人は不自然に視線をサンドイッチに集中させて黙っている。ごめんよ思春期の男子たちに気を遣わせて。当の本人は自覚がないようで鼻歌すら奏でている。くそう鼻歌ですら上手いってどういうことなんだ。しかも昨日見ていたアニメの主題歌だし最高かよ。


気を取り直してサンドイッチ作りに精を出し、それぞれの名前を書いた付箋メモを貼って準備を完了させる。にしてもすごい量…みんなよく食べる。あーよく食べる男子の尊み秀吉。

水筒とサンドイッチ、レジャーシートと他にもバドミントンやフリスビー、ついでに縄跳びを持っていざ出発!





『んー!いい天候!』
「めっちゃ晴れてんな!」
「風通しもよくて気持ちいいですね。たまにはこんなのも良いかもしれないです。」
「なな、バドミントンしようぜ!」
「おい、まだレジャーシートも広げてないんだよ先走るな低能。」
「別に今この瞬間に始めようなんざ言ってねぇだろうが!」
「じゃあ一息つくまで待てない低能だね。」
「てんめぇ、言わせておけば…」
「おい、お前ら。来て早々ケンカすんな。」
「ごめんなさい、兄ちゃん」「すみません、いち兄…」


兄弟喧嘩が終息した所で青々とした芝生にレジャーシートを広げ、四隅に荷物を重石がわりに置く。すると待ちきれんばかりに二郎がバドミントンのラケットとシャトルを早速取り出した。一緒にやろう!と私の手を引くこのワンコ男子、最高に可愛すぎるんだが?私の思考回路奪われたんだけどどうしてくれるの。ああ、考えるなんて必要ない。心で通じろ…なに言ってるんだ私。やっぱり思考回路バグってるわ。


「おーっし、いくぜー?」
『よし来い!』
「おりゃっ!」
『とりゃ!』
「ちょ、姐ちゃん、あはははは!」


シャトルを上空に投げて見事にラケットの面に当てる二郎。弧を描いてシャトルは私のほうに向かってくる。久々のバドミントンに、距離感が掴めず盛大に空振った私を笑う三兄弟。

「春姐、そんな、"まさか!?"みたいな顔でそのまま固まるのやめてもらっていい?」
「スイングはしっかり、…してたぞ、っく、」

ば、バカにしやがって…!(涙目)一郎も笑いを堪えようとしてるけど漏れてるから!…くそぉ、今にみてろよ〜!芝に埋もれたシャトルを拾い上げ、摘まんだシャトルを下から打ち上げる。上から打つより確実だもんね!それからしばらくするとラリーが続くようになってきた。それで満足した私は三郎にラケットを預けてバトンタッチする。それに倣って二郎も一郎と代わろうとする。

「次は兄ちゃんも!」
「まだやってていいぞ?」
「ちょっと休憩!それに三郎は俺より兄ちゃんとやりたいと思ってるだろうし。」
「はぁ?二郎、お前いち兄に何言ってんだよっ!」
「そんな訳ねぇだろ。なぁ、三郎?」
「え!あ、はい、もちろんです!」
『いいじゃん、早めに出て来て時間はあるんだし。一郎もやりなよ。』
「そうだな…うっし、三郎やるか!」
「は、はははいっ!行きましょう、いち兄!」


遠慮しだした一郎を促せば納得してくれたみたい。こんな時にまで弟たちを優先せず、素直にみんなと一緒に混じればいいのに。一郎が三郎に声を掛けると途端に緊張しだす三郎が可愛すぎて天使なのは安定である。

それから交代していき、インドア代表の私と三郎は早々に離脱する。体力オバケの一郎と二郎がかなりの本気度でバドミントンをやりだした。スマッシュとか一体何キロでてんの?ってぐらいでシャトルがもはや見えない。…人間じゃなかったのかこの二人。

あ、あとですね。これはオフレコなんですがバドミントンのスマッシュやらシャトルを追いながら後ずさっていく時とかに垣間見る腹チラの宝庫。バドミントンって、いいなぁ。春を。





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