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□カランコエ(一郎連載@)
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そんなこんなで結局一郎の勝利で終え、二人がレジャーシートに寄ってきた。汗だくじゃないか。水筒からお茶を紙コップに移して二人に渡せばきゅーっと良い飲みっぷり。上下する喉仏が私の最高の仏様です、ありがとうございます。



─54,過ぎ行く季節(後)─



『そろそろお昼にしよっか!』
「そうだな。」
「腹へった〜」
「籠を広げますね!」


ピクニックらしくバスケットにサンドイッチを詰め込んだ。開いて自分の名前を貼ったものをそれぞれ手にとっていく。一郎のいただきます、の一声に私も含めみんなでいただきますと声を合わせた。


『んー!エビマヨトマトは最高の組み合わせ〜。』
「いやいや姐ちゃん、ハムとチーズが最高に決まってんじゃん」
「ベーコンレタスも美味しいよ」
「唐揚げタルタルだろ。」


それぞれの推した具材の話や最近あったひょんな依頼や出来事、もうすぐ中間考査だの勉強は進んでいるかなど話し込んでいたら、いつの間にか山ほどあったサンドイッチはキレイに姿を消していた。昼過ぎになった時間は日差しが暖かいが、木々をぬって通る風が涼しくさせてくれるので心地好い。ぐっと伸びをして、籠や水筒を片したシートに寝転がる。


「春姐、食べてすぐに横になると豚になるよ」
『ぐっ…さぶちゃ、手厳しい…でも許して。お腹一杯で動けない…』
「僕たちに釣られて食べ過ぎたんじゃない?」
『へへ、ばれた?』


いい食べっぷりの三人に、ついつい私もサンドイッチに次々と手を伸ばしてしまった。ごろん、と三郎も横になる。

「たまには外もいいね」
『うん、でも今度はボードゲームとかやろっか。』
「言ったよ?約束だからね。」
『私が三郎との約束破るわけないじゃん。』

寝そべって、お互いのほうを向かい合い約束を交わす。微笑み合うこの時間、無料で良いんですかね?大丈夫ですか、こんな幸せで。シート越しの芝生の感触を楽しんでいると、お手洗いから帰って来た二郎が今度はフリスビーだと張り切っている。とんだバケモ……体力無尽蔵人間だ。

しかしその体力の元といえば、若さは勿論のことだがそれ以上に努力を積んでいるからだと私は知っている。ヒプノシスマイクを用いたラップバトルでの耐久力をあげるために、依頼をこなしながら身体作りをしているのを、私は間近で見て、知っているのだ。季節が変わる。…また、バトルが近づいてくる。前回のバトル結果やバトルでの攻撃に傷ついた姿の三兄弟が脳裏に浮かぶ。


少し感傷に浸っていた私だが、視線を上げて入ってきた情報に釘付けになる。薄手の長袖のTシャツを着た一郎と二郎が二人とも腕捲りをしてフリスビーを投げ合っているのだ。そして飼い主とワンコにも見えるのは何故だ。かわいい。かわいすぎる。なんて絶景なの。この世の三大絶景はバスブロだけで成り立つよ、きっと。


「姐ちゃんたちもやろうぜ!」
『おっけー!』
「僕はもう少し休憩しとくよ」
「はっ、三郎は体力無さすぎんだろ」
「なんだと!?」

二郎の煽りで見事に三郎も参戦することになり、四人でフリスビーを投げ合う。

「ちょ、おい春どこ投げてんだ」
『おおー!一郎ナイスキャッチ!』

「ほら、取ってこい低能!」
「おいコラ三郎、てめぇ…!」
「なかなかやるじゃないか。」
「これがお前に取れるか?よっ!」
「な、どこ投げてるんだよノーコン!」

「ケンカすんなよ。、春!」
『え、ええ!!?』


二郎と三郎がやり合い出した所で間に入った一郎がキャッチしたその流れのまま私の名前を呼んでこちらに円盤を投げてくる。何だそのカッコいいキャッチ&リリースは!?一郎のカッコ良さに目を奪われるも、咄嗟に受け取ろうと両手を伸ばした。加えてジャンプをするも虚しく、その上空を通りすぎる。万歳した間抜けな格好のまま振り返ると、にやついた二郎がフリスビーを手に持っていた。また視線を一郎に戻せば、イタズラっ子のように笑ったので最初から私ではなく二郎に投げたのに気付く。

『ひ、ひどい!!』
「はっはっは!」

なんですか、このカッコ可愛いイタズラっ子は!?こんな間抜けな姿を晒されたとしても許すしかなくない!?どうですか国民のみなさん!!!でもちょっと腹が立つので一郎に突進して分厚い胸板に頭突きしてやった。

「うおっ、」
『……意地悪。』
「っ…悪かったって。」

きゅっと眉間に皺を寄せて抗議すれば、何故か一郎は言葉を詰まらせ少し目線を泳がせて謝罪した。許す!と一言放って、私は振り返って二郎にパスをせがんだ。その後、私が一番最初にリタイアするのだが。だって三人とも背が高いから圧倒的不利!


レジャーシートに座りそのまま近くの木に寄りかかった。さわさわと風に揺れる草木の音を楽しんでいると、体力の限界だった私の目蓋は誘われるように閉じていった。




はっと目を覚ますと、まだ明るかった。そして現状に私の身体と思考がフリーズする。どういうことかって?私もわかんない。

「お、起きたか?」
『ひえぇぇぇ』
「ふっ、なんだそれ。」


クツクツと可笑しそうに笑う一郎を、私は見上げていた。木に寄り掛かっていたはずの自分の後頭部には、木ではなく固いのに柔らかいものがありそれを枕にしている。お気づきでしょうか、一郎の膝枕です。私死んでもいい。見上げてもイケメンってどういう事なの、理解が追い付かない。

片膝を立てて、反対の伸ばされた太ももに私の頭は鎮座している。私の上半身には、いつも着用している一郎のジャケットが掛けられている。状況を理解したはずなのに寝顔を見られて恥ずかしいやら嬉しいやら最高やら感情が爆発しそうだ。平静を装ってようやっと口を開く。


『結構寝てた…?』
「いや、20分ぐらいか?朝早かったしまだ寝てていいぜ。…色々準備してくれてありがとな。」

さらり、と彼の太ももに散った私の髪を掬われる。はあああ、好きすぎる。

『いやいや、私も楽しみながら準備させてもらったから。むしろ三人ともお出かけに付き合ってくれてありがとうって感じ。』
「そうか?」

よいしょ、と上体を起こしてジャケットをお礼を言いながら畳む。ふと視線を回りに目配せば、二郎と三郎が縄跳びで二重跳びをしていた。これも一体どういう状況か。

『何してるの、あれ…』
「二重跳びをどっちが多く跳べるか競ってるみたいだぜ。」

あいつら仲いいよな、と微笑んで二人を見る一郎の瞳は慈愛に満ちている。いやいや一郎も含めて、みーんな仲良いからね。そんな三人まとめて愛してんぜ…。って寝惚けた頭の中でアホみたいな、でも間違ってはいない言葉が浮かんだ。

『一郎、行こ。』

立ち上がり、見上げてきた一郎に手を差しのべる。そんな私にきょとりとしていた一郎はおう、と笑ってその手を取った。

『まーぜーてー!』
「姐ちゃん、起きたの?」
『お待たせしちゃった?』
「いや別n…『ん?』待ってたぜ!」

素直な二郎かわいいなぁ。圧力?かけてない、かけてない。三郎と二郎が持っていた2本のなわとびを結んで1本にすれば、あーら簡単、大縄のできあがり。

「まって、これ、しんど…!」
「フツーに、考えてっ、4人で大縄はっ…むり、っ」

二郎と三郎が文句を言いながら跳んでいる。それはそうだろう。2人で縄を回し、2人で順に入っては抜けていく。

『じゃあ次から2人が入った所から数数えるから出来るだけ跳んで!』

そういって二郎から入り、跳んでる間に三郎が入るタイミングを伺っている、ふりをする。

「さぶろ、てめ、早くっ、入って、こいっ!よっ!」
「タイミング見てるんだよ、タイミングを」
「いつでもっ、入れん、だろがっ!」
『さ、さぶちゃ…私の肩も限界…っ!』
「仕方ないなぁ…」
「お前らなぁ…」
『ペア分けミスった…!一郎とだと身長の差が…!肩が死ぬ〜!』

とは言っても一郎と二郎が跳んでるのも顔にぶつけないよう大回ししないといけなくなるんだけど。どっちも地獄行きだ。誰だ大縄なんてやりだしたの。私か。それから三郎が入って20回を越えた所で私が先にギブアップを告げた。ちなみに私と一郎ペアは私の足が引っ掛かって16回。頑張った方では?縄が当たった足首が結構痛い…


日の入りも、最近は早くなってきた。空が夕焼け色に染まって、帰る準備を始める。ふと太陽の色した空を見上げチームカラーみたいだと思った。カラになって行きより軽いバスケットとレジャーシートを持って帰路につく。


さーて、これは絶対明日は筋肉痛だぞ。
ゆっくり湯船に浸かりながら今日の瞬きシャッターを押した絶景の記憶でも思いだそう。







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