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□カランコエ(一郎連載@)
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冬。ボーナスが入り、冬休申請もできる時期になった。早速私は冬休を2日とり、小旅行へ。どこにって?ナゴヤへ!!


─59,B級なんて誰が言った─


以前中王区に拉致られた事件の前にカンサイで研修があったのも大分前のように感じる。そこで少し話した人がナゴヤの方で、今回その人とナゴヤで食事をすることになったのです!

今日はその美鶴子(みつこ)ちゃんのオススメナゴヤ飯をご紹介してもらう予定なので朝食も少なめにして新幹線に乗り込んだ。携帯のメッセージアプリで連絡を取り合い、無事に合流することができた。

『久しぶりです〜!元気でした?』
「春ちゃん、久しぶり!私は元気でしたよ〜!春ちゃんこそ、病院から何か知らないかって聞かれて心配したんですからね!」
『あはは、この通り無事です!その節はお世話になりました。』
「無事ならいいんですよ〜。じゃあどっからいきましょうか…」
『あの、食べ歩きというか、食べ物中心とかでもいいですか?』
「もっちろんです!」

きゃっきゃと手を取り合い騒ぐ。とても二度目ましてとは思えない感覚だ。年も近いということで敬語もなくして食べたいものを並べていく。

『あんかけスパに挑戦したい!』
「おっけ〜あんかけスパならここしかないね」
『楽しみ〜!』

案内された先は素敵な洋風のあんスパ屋さん。名物というのも人が賑わっている。案内されてメニューを開いて感嘆の息が盛れる。

『あんかけスパって…種類あるんだ…』
「トッピングも好きなの選んでね〜」
『トッピング…?』

美鶴子ちゃんの話を聞いていると、あんかけスパは"カントリー"、"ミラネーズ"、"ミラカン"の種類があるみたいだ。そんな迷いすぎるよ…。うんうん唸った結果、野菜とお肉が入ったミラカンでトッピングなしをオーダーした。

『〜っ!おいしい!』
「口に合ったみたいでよかったあ!」

ピリッとコショウが効いたあんがもっちり極太麺に絡まって、さらに野菜の食感と自然な甘味とベーコンの塩味が最高である。

『結構辛いんだね…』
「そう?こんなもんだってずっと思ってたから分かんないな〜。でもこれが癖になるのよ。」
『分かる気がする。』

これはナゴヤリピートしてカントリーとミラネーズも制覇しなきゃという使命感まで生まれる。もっちり通り越してもっとりした麺とたっぷりの具が空だった腹を満たしていく。やばい、食べ歩きできるかなこれ…。

そのあと不安を抱えながらもオオス商店街へ向かった。歩きまわりながらお店を見ていると満腹感はどこへやら。もつ、ビール、手羽先。だって目の前に美味しいものが並べられたら満腹中枢なんてぶっ壊れるしかないんだもん。

『こんな時間から飲めるなんてサイコー!甘辛いミソ、タレが最高すぎる…』
「ナゴヤ飯サイコー!」

かこん、とビールのグラスというかプラコップを合わせながら日本には旨い物が沢山あると盛り上がる。さ、流石にお腹は一杯だ。

オオス商店街には日本食だけじゃなくて他国料理のお店も沢山あるし、食べ物だけじゃなくて服屋やハンドメイド雑貨、お香のお店もあったりと様々な文化がひしめき合って共存しており、いくら時間があっても飽きそうにない。

メイド喫茶もあったりなんかして、ナゴヤのメイド喫茶も気になったが今回は見送った。擬態オタクの擬態状態だからです。うう、ぬいちゃんはホテルまで鞄の中でゆっくりしててくれ…。

「腹ごなしにコメダでお茶する?」
『ナゴヤ発のコメダ…!現地のコメダ行きたい!』

街並みを楽しみながら、お気に入ったお香を買ったりと大分歩いたが一杯につまったお腹はまだ消化を頑張っている最中だ。食べるのは一旦休憩としてコーヒー休憩はどうかと提案する美鶴子ちゃんに大きく縦に首を振った。


「え、ちょっと待って…!あれって四十物十四じゃない…!?」
『え、あいもの…?』

歩いていると、何かに気づいた美鶴子ちゃんが声をあげる。だ、誰だそれは…。ポカンとしているのに気づいた美鶴子ちゃんが彼の紹介を続ける。どうやら視線の先でティッシュ配りをしている彼は彼女が最近聴いているV系バンドのボーカルらしい。
彼女の説明を聞いていると、その男の子に柄の悪そうな男がぶつかった。

『あ、』
「ええ、なんかヤバい感じじゃない…?」

四十物くんが謝っている様子があったが、男はその胸ぐらを掴んで大声でいちゃもんを付けだしている。周りはみんな関わってはいけない、というように避けて視線を合わせようとせず通りすぎていく。隣の美鶴子ちゃんも戸惑いの声を漏らした。

「お金は払えないっすよ…」
「いい度胸じゃねぇか…おらっこっち来いや!!!」
「うわーん!やめてくださいっす!」
『ちょっと!』
「おい!」

涙を流す青年に、しびれを切らして私も見てみぬ振りはできずに思わず口を挟んだその瞬間。聞きなれた通る声が響く。まさか、こんなとこに居るはず…

声の元に視線をやれば、やっぱりその声の主は愛しの彼、山田一郎が立っていた。

「謝ってンだから離してやれよ。」
「カンケーねぇやつがしゃしゃってんじゃねぇよ!」

制止の言葉を発した男が一郎にも食いかかるが、彼の低い声と鋭く細められたオッドアイでのひと睨みに怯んだのかすごすごと去っていった。

「大丈夫か?」
「は、はいっす…。ありがとうございますっす。」

先ほどの鋭い視線ではなく柔らかく心配した目で一郎が青年に声をかけ、彼もお礼の言葉を伝える。それから彼らが言葉を交わしているのを見ているのもなんだ、とその場を離れようとすると青年がこちらに声を発した。

「あっ、あの!お姉さんも助けようとしてくれてありがとうございましたっす!」
『え、いや、結局何も出来なかったけど…無事なら良かったです。』
「春ちゃん、突然行くから心配したんだからっ」
『ごめんね美鶴子ちゃん。』

彼が声をかけてきたので一郎が私の存在に気づいた様で目を見開いている。あああああなんですかその赤いツナギ服…その腕捲りと手袋性癖すぎるんですけど。彼女である私に許可取ってからその格好で出歩いてもらえませんかね?なーんてね。
でもきっと一発で惚れられちゃいますよ。

「春、旅行ってナゴヤだったのか?」
『うん。一郎も遠出の仕事ってナゴヤだったんだね。』
「おう、スゲー偶然だな。っと、もう行かねぇと。お前も気を付けろよ。」
『うん、仕事頑張って。』
「さんきゅ。春も楽しめよ。」

そう言って隣にいた美鶴子ちゃんにぺこりと会釈して去っていく一郎。は〜、会えると思ってない日に会えるなんて なんてラッキーなの。

「ちょっと春ちゃん!?バスターブロスの山田一郎とも知り合いなの!?」
『ああ〜、うんそうなの。』

おっとこれは説明求められるやーつー。キラキラとした視線を私に向ける美鶴子ちゃんに、これから根掘り葉掘り聞かれるんだろうなと覚悟を決めた。



※A/R/Bイベスト/捏造含

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