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□あんもん番外編
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遂にテストが終わり、終業式を向かえる。
今年の夏は楽しみだ。大きな成りをしてワンコみたいな彼を思い浮かべる。

思いが通じ合い、最初にしたことといえばセックスだ。順序が逆になってしまったが、この夏休みでプール、夏祭り、海、水族館に行こうとベタベタなデートの予定を立てていた。



終業式を終えて荷物を纏めていると、バタバタと廊下から激しい足音が響く。近づいてきた、と思えば私の教室の引戸が勢いよく開かれた。



「春!!!」
『……どうしたの。』


きっと耳と尻尾が付いてたら両方ともへたりと萎んでいただろう。うるうると眉を下げて表情で目一杯悲しみを表現している。



「俺、俺っ…夏休み、補習…!!!」


忘れてた。とへなへなとしゃがみこむ二郎。いやいやテストの点数やばかったら補習だし忘れないでしょ。とそのまま伝えてやると出かけるのが楽しみでそれしか考えてなかったと漏らす二郎に、ときめいて絆される。



「補習、60点取れるまで再テするって…」
『つまり、1回目の再テストで合格すれば早く離脱できて夏休み楽しめるってことでしょ?』
「そーだけど…簡単に言うなよ〜。」


よしよしと私の膝あたりにある頭頂部を撫でてあげれば恨めしそうに見上げられる。そんな目でみないでよ……


『……夏休み、ウチで勉強する?』


そう提案すれば、先程とは一転し目を輝かせて是と答えるワンコだった。もう一度わしゃわしゃと髪をかき混ぜる。かわいいやつめ。


少し前では考えもしなかったこの状況と心境の変わり様。私の全てを塗り替えてしまったのはこのワンコみたいな男の子だ。







夏休みに入ったというのに、二郎はせっせこ補習を受けに学校に通っている。私は噂もあって友達もいないし、二郎以外との予定はないためひたすらに暇を持て余していた。仕方がないので今の内に夏休みの課題を済ましておこう。


課題の問題集をキリの良いところで終わらせて一息つく。ぐっと伸びをして携帯を見ると、二郎からメッセージが入っていた。


〈来週の頭、再テストだって!〉
《じゃあ、今週末にでもウチ来る?》
〈まじで頼む〜!!〉


泣き顔の絵文字つき。さらには土下座したキャラクターのスタンプも付いてきた。必死か、と思わず画面越しに笑ってしまう。了解と返事を返し、それまでに少し掃除でもしようと部屋を見回した。そんなに散らかってはないから、すぐ済みそうだけど。



そして週末。家族は仕事だ。インターホンが鳴って出迎えればキャップを被った彼が立っている。アスファルトからの照り返しが熱い。


『暑い中いらっしゃい。』
「まじであちぃ〜!お邪魔します!
あ、これウチから。」



手土産を渡されたのと、靴を脱いで揃える後ろ姿に意外性を感じたのは秘密だ。見た目からは想像できなかったが、ちゃんとお兄さんに礼儀など教えて貰ってるのだろう。


『私の部屋、冷房効いてるよ〜。飲み物持ってくから先上がってて。お茶とコーラどっちがいい?』
「うーん…コーラ!」
『はーい。』


にかっと歯を見せて笑う彼は茹だる暑さの中爽やかだ。お盆に乗せたコーラとお茶を手に階段を上る。部屋に入るとやや緊張している彼に笑ってしまった。


『どこが分かんないの?』
「……どこが分かんねぇのか分かんねぇ。」
『何のための補習なのよ…とりあえず、テスト問題解き直してみて。分かんなかったら聞いてね。』
「お、おう…」


ローテーブルに二郎がプリントを広げ、ルーズリーフに回答を書いてもらう。え、初っぱなからペン止まってますけど。

『……どれ』
「これ、ここまではこーで合ってる?」
『ああ、うん。それでこの次はこの公式を使って…』
「…これを代入か!」
『そうそう。で、計算してみて。』



そんな調子で問題を一つずつ解説していく。やってみてというより教えてから似た問題をいくつか解く方が良さそう。多分次の問題をやると忘れちゃうから、繰り返し。テスト問題を一周して同じ公式を使う問題集の問題をピックアップして解いてもらう。一通りそれを終えて休憩とした。



「春、教えるの上手いな…」
『そう?人に教えるのとかしたことないから分かんない。』
「友達いねーもんな。」
『うるさいよ』



にや、とからかうように言ってくる二郎のほっぺたを摘まんでやる。教えてもらっておいてそんな口を利くのはこの口かー!とひっぱると素直に謝罪の言葉がでてきた。ぱっと離すと頬をさすっている。



「でも、まじで。弟の三郎なんてバカだの低脳だとか罵りながら教えるんだぜ」
『……弟くん、中学生じゃなかった?』
「………」



中学生に教えて貰ってるのかい、二郎くん。兄として情けないかもしれないが、高校生の問題を解ける中学生すごいな。………すごいな。(2回目)


「なー、春ちゃん」
『なぁに、二郎くん』



ふざけてちゃん付けしてきたので私も君付けで返して二郎を見る。今休憩中だよな?と聞かれるのでそうだねと頷いて返した。


「んじゃーちょっと触りてぇ。」
『………』


男子高校生の素直な言動にしょうがないな、と二郎の膝の上に乗っかった。襟足の長い髪がかかった首に腕を回す。どうですか、と挑発するようにオッドアイを見つめればすぐさまそこに情欲の炎が灯った。後頭部を捕まれて引き寄せられる。噛みつくように唇を食んだ。




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