忍たま夢(2)

□わたしだけの看病
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 雑渡さんが大火傷をした――。
 わたしはその報せに、頭が真っ白になった。
 早く彼に会いたい。どんな姿でも構わないから、顔を見たい。彼が生きているのを、確かめたかった。
 しかし、今は急ぎの治療で慌ただしく、彼が運ばれた部屋にわたしが入っていいはずがなかった。不安でいっぱいの中、わたしは彼が無事であることを祈りながら、自分の部屋でしばらく待った。
 時間が、永遠にも感じられた。雑渡さん、雑渡さん……どうか無事でいて……。何度祈ったことか、もはやわからない。
 沈む夕日が闇を連れてくる光景に、自分の心まで闇に落とされてしまいそうだった。
 そんな時、「紫杏さま」と、山本さんが呼ぶ声が聞こえてきた。
「どうしました!」
 雑渡さんについて、何かわたしに言いに来たに違いない。心臓が跳ねた。
 山本さんは「失礼します」と言って障子を開けた。
「組頭のことですが……」

 大火傷の理由は尊奈門くんのお父さんを助けたから。
 完全に火傷の傷が治ることはないけれど、痛みがひき、通常通りに体を動かせるようになるには三年はかかるということ。
 そして、しばらく雑渡さんに会うことは我慢しなければいけないこと――。
 山本さんは静かな声で、わたしに教えてくれた。
「弱り果てた姿は、誰しも見られたくないものでしょうから。ご辛抱を。元気になれば、必ず組頭からあなたに会いたいと仰るはずです。組頭は、どんな時でも紫杏さまのことを想っていますから」
「わかりました……。わたしも、会いたいですけど、やっぱり辛いです……苦しそうな雑渡さんを見るのは……」
「暗い顔をしていては、組頭が悲しみます。紫杏さま、どうか、こんな時だからこそ微笑みを絶やさないで下さいませ」
 山本さんは、心身共に疲れ切った顔で、薄く笑みを見せてわたしに願った。
 雑渡さんが大火傷をして悲しんでいるのはもちろんわたしだけではない。仕事の面でも大変になってくるのは、わたしを守るタソガレドキ忍軍。
 姫である自分にできることなど限られているけれど、わたしの微笑みが彼らを癒やしてくれるのなら――わたしは、希望を持って、いつも笑顔でいよう。
「そうですね、山本さん」
 わたしは山本さんに、労りと感謝を込めて微笑んだ。

 それから何ヶ月か経ったある日のこと。
「紫杏さま」
 庭を散歩していたわたしの背後で、山本さんが急に名前を呼んだ。
「山本さん!」
 わたしが振り返ると、地面に片膝をつく山本さんは軽く頭を下げた。
「紫杏さま、組頭がお呼びです。今すぐに、会いたいとのことです」
 待ち望んだその言葉に、わたしは涙が出るほど嬉しかった。
「ありがとうございます! わかりました!」
 わたしは急いで彼のいる部屋と向かった。
 度々、山本さんが雑渡さんの回復について報告しに来てくれたので、不安な心の中に少しの余裕がある。会話もでき、体もある程度なら動かせるくらいに回復したという雑渡さんの姿……まだ全身、包帯だらけで痛々しいのだろうけど、わたしは、暗い顔はしない。明るい笑顔で、彼を元気づけたいから。
「雑渡さん……!紫杏です」
 うるさく暴れる心臓を落ち着かせながら、わたしは久しぶりに雑渡さんに向かって声を出した。と言っても、まだ障子の前である。
「紫杏、入って」
 許可が出たので、わたしは部屋の中に入った。
 布団から、包帯だらけの雑渡さんが上半身だけを起こしている。肌を覆うのは包帯のみで、服は何も着ていなかった。
「あ……」
 顔に熱が集中していく。まさかそんな姿で体を休めていたなんて。
 彼の下半身を隠す掛け布団が、せめてもの救いだった。
「おいで」 
 そんな格好で誘われると、わたしは言葉が出ない。
 心配してました、寂しかったです、会えて嬉しいです――わたしが言いたかった言葉は、全部、涙になって溢れた。
「雑渡、さん! 雑渡さん……!」
 布団の前に崩れるように座り込んだわたしを、雑渡さんの大きい両手が包んでくれた。
「言いたいこと、たくさん伝ってるよ。心配かけてごめんね」
 泣きじゃくるわたしの背を、優しく雑渡さんは撫でてくれる。
 包帯が巻かれた手は、そうするだけでも痛むに違いない。けれど、わたしを撫でる彼の手付きは、いつもと変わらず、とても心を落ち着けてくれた。
「雑渡さん……大好きです」
 嬉しさで、自然と笑顔が浮かんだ。
 泣いた次は笑顔、ころころと表情が変わるわたしを、雑渡さんはくすくすと笑いながら見てきた。
「わたしもだよ、紫杏」
 ちゅ、と互いの唇が重なる。
 この感触をずっと待っていた。
 体にもっと覚えさせておきたい。
 わたしは積極的に、何度も角度を変えて、雑渡さんの唇を味わった。
「紫杏とキスするの久しぶりすぎて……まずいなぁ、こりゃ」
「ど、どういう意味ですか」
「こういう意味」
 と、雑渡さんは言って、掛け布団を指差した。
 布団の一部が盛り上がっている。ちょうどその場所は、雑渡さんの股間にあたるところだ。
 つまり。
「あ、え、そんな――恥ずかしい……」
 怪我人だというのに、興奮しているということ。変わらず、わたしに対して。
「ねえ、紫杏。久しぶりに、いいかな?」
「で、ですが、お体が」
「わかってる。だから、口でお願いしたいんだ。ここでずっと寝てばかりで、することもないし、可哀想なわたしのお願いを聞いて?」
「わかりました……では、そのように」
 本当に、本当に久しぶりだ。
 まさかこんな流れになるなんて考えてもいなかった。
 掛け布団の下に隠れている雑渡さんの雄のことを想像すると、目がとろんとしてくる。あの形、大きさ、におい、どれもわたしを虜にしてくる。
 掛け布団をずらし、雑渡さんの下半身を隠す布を全て取り払った。
 両足とも、足の付根からつま先まで、包帯でぐるぐる巻きだ。腹部も例外ではない。
 だけど、股の間から顔を覗かせている雄だけは、いつものように――いや、いつも以上に、元気そうだった。
「姿勢が辛かったり、もしどこかに痛みを感じたらすぐに言ってくださいね」
「紫杏ったら。今は、そんなこと聞かないの」
「は、はい」
 行為に集中して、楽しめということだろう。
 わたしは「では遠慮なく」とつぶやき、雄をくわえた。
「んっ」
「ああ……あったかいね、紫杏の口の中」
「んぅ」
 酔いしれた声が聞けて嬉しい。わたしは雑渡さんの雄を味わうように、唾液を絡め、舌で何度も刺激した。
 びくん、びくんと、雑渡さんの腰が跳ねて、雄が膨らむ。久しぶりだからか、雑渡さんの呼吸が荒い。
「あ、そこ、気持ちいい……」
 やんわりと、頭を押さえつけられた。大きすぎる雄はそれだけでわたしの喉を突いてきて、むせてしまいそうだ。
 力を込めて雄を吸い上げると、雑渡さんは恍惚の叫びとともに喉をのけぞらせて、汗を散らした。
 口の中に広がる雑渡さんの味を、じっくりと口内に染み渡らせてから飲み下す。喉に貼り付くようなこの感覚、たまらない。
「ごめん、いっぱい出たよね」
 布団の上に力なく体を横たえた雑渡さんは、まだ整わない呼吸のまま、わたしを気遣ってくれた。
「いえ、大丈夫ですよ。いっぱいの方が嬉しいです」
「ふふ。なら、よかった」
 わたしも雑渡さんの隣に横になった。
 すぐに優しく抱き寄せて、抱きしめてくれた。
「わたしは、今はこんな状況だから、紫杏をよくしてあげられないけど、指なら平気だよ」
「あっ」
 わたしの太ももをつつ、と指で撫で上げ、股の間へと侵入してくる。
「濡れてたんだね」
「い、言わないで」
「もっと濡れてほしい」
 指が、とうとうわたしの中へと入ってきた。
 最初は入り口を優しく、解すように。大きな指がゆっくりと挿入を繰り返す。
 自分でも、どんどん濡れているのがわかる……。
 雑渡さんは量の増えたわたしの蜜を、わざと音を立てて、アソコに塗りつけるように指を動かしてくる。
「こんな姿のわたしにやられて、興奮してるなんて……。紫杏、かわいい」
「だって、雑渡さんが、大好きだから……あんッ。どんな姿でも……ん! すき」
 いきなり三本に増えた指が、わたしの中を好き放題に動き出す。
 限界まで快楽を与えられた私は、雑渡さんにしがみつきながら達した。
「また、しようね」
 わたしの中から指を抜き、透明な蜜にまみれた指を、雑渡さんはぺろりといやらしく舐め取った。
 


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