novel

□どきどき
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「樺地、これわかる?」「これは…」
「そっか、ありがと!」「うす」

鳳長太郎、ただいま苦手な英語と悪銭苦闘中!隣に英語に強い樺地もい
るからなんとかやってるんだけど…
分からないものはわからないんだなあ

そんなとき、ふとはちみつの香りがして、思わず樺地をみる。
どうやらぷるぷるした唇からしているらしい。
いつも間近で見てるわけではないから定かではないけど樺地もこういうの着けてるんだなぁ、なんて感心してしまう。
何故だか目が離せずじっと見ているといつの間にか樺地はこちらに気づ
いて心配そうにしていた。
「おおとり、どうしたの…?」
それでも唇から離せず数秒後にハッとして、恥ずかしさが込み上げてく。
「ご、ごめん!」「…具合、悪い…?そろそろ…休憩、する…?」
顔を赤くしてる自分に気を遣ってくれるものだから、心が暖かくなると同時に差恥心でいっぱいになった。
「大丈夫!ちょっと休もうか。麦茶、入れてくるね」顔をそらしながら立ち上がる。明らかに挙動不審だけど、こればかりはしょうがない。
「ありが、とう」きっと不思議そうな顔をして目をぱちぱちさせていると思う。でもまた目が離せなくなってしまいそうだから。
なんだか、変な気分。
深呼吸して、麦茶を汲んで自分の部屋に戻ると、樺地は参考書に目を通していた。
確か苦手だといっていた現代文だ。なかなか理解できないようで、少し悩んでいるように見える。
「樺地、麦茶どうぞ。」「うす…いただき、ます」
顔をあげて丁寧に参考書をおいてから麦茶にロづける。また無意識に唇に目がいかぬように隣に座って参考書を手に取った。
しかし数秒して横目にちら、と見ると、樺地は麦茶を口から流し込んでいるところだった。
気持ちよさそうに、喉に落ちるのを待っている。ゴクリと小さく聞こえて、また流し込む。
ぼてっとした唇がグラスにロづけるのを最後まで見たことはなかったと思う。
女の子ってだけでも、こんなに…
かんがえちゃいけないような変な気分に再びなり、居たたまれなくなるのに目が離せない。
飲み干し終えたようで、丁寧にグラスの縁を拭いてから、鞄からあるものを取り出す。
…気になる、原因。
やはりはちみつが香るそれを二塗りしてから全体に馴染ませていた。更につやっとして心なしか主張されたような…
「おおとり…」肩をポンポンされて、一気に現実に戻る。
「えっ、あ」
先程と同様に、除き混むように顔を傾けた樺地。…と距離が少し縮んでた。
「あのやっぱり、熱が…」綺麗な瞳が少し下がって心配をしていることがすぐにわかる。そんなときでも顔が近くて、主張された唇がより強調され、頭が沸騰しそうな思いだ。
…というか、沸騰した。

「う、わあっ」情けない声をあげる。恥ずかしいのに変な気分が止まら
ない。
ぼふんっと音が間こえそうな俺の変動っぷりに樺地は驚いて、慌ただしく「冷たいもの…!」と言って自身のグラスを唇に持っていって、冷たい液が喉を通って数秒。
心なしか熱さも落ち着き、やっと樺地を見ることができ、視線もあった。
「あ、ありがとう 」
どうしようもない今日の自分に、縮こまりたくなる。それを察してか、樺地は体を擦ってくれた。不思議と落ち着く…
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