本編小説

□目覚め
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「───!!!」

人々の悲鳴が聞こえる。
目の前には赤の花弁がばらまかれたような残酷な風景が広がっている。
…なんて、非道な風景だ。吐き気すら覚える。

「勇者様ぁ…っどうか、どうかお助けを…!!」

子をなくした母親が僕の足にしがみついて来ている。
この人も、邪気に取り憑かれている。
……辛い目に会う前に断ち切らなくては。

「あぁあぁぁあああッッッ」

腰に下げていた剣で女性の胴体と頭を切り離す。
醜い断末魔と共に生ぬるい液体が肌を伝う。

……何処で、何を間違ったというのだろうか。
邪気が突如現れ世界はほぼ終焉を迎えた。

だが、世界にトドメを指すのは邪気では無い、勇者とおだてられ善人と思っていた偽善者の僕だったのだ。

創造に始まり、破壊に終わる。

それが世界のルール…とでも言うのだろうか?

……ああ、神様。
こんな残酷な結果、納得いかない。
…どうか、もう一度チャンスをください。やり直せるチャンスを。
……チャンスをくださるのならば、僕のこの命、差し出します。

……どうか、神様─
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