夢物語 長編
□蒼天の舞姫 12
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歌い終わったルクルは魔法帝の像に一礼し、先程視線を感じた方に目をやると男の子が2人こちらを見ているではないか。
このまま立ち去るのも何なので、2人の元に箒に乗って降りると声をかける。
「こんにちは。この村の方々ですか?」
「えっ、あ…はいっ」
「…貴女誰ですか」
「おいっ、ユノっ!」
ユノに注意するアスタを諌めながら、ルクルは名前を口にする。
「失礼しました。私、魔法帝直属のルクル・ベルベットと申します。」
『魔法帝のッッ!?』
魔法帝と口にした途端、2人は目をキラキラしながら驚いた。
その様子を見てルクルはユリウス様は人気者だなっと考えていると、アスタから質問が飛ぶ。
「あのっ、えと、ルクルさん?はどうしてこの村に………。」
「一度この魔神の遺骨を見てみたいと思い、王都から来たのです。まさかこれだけ大きいとは思わなくて驚きましたが。」
「王都から来たなら、貴女は貴族でしょう。…どうして自分たちなんかに敬語なんて。」
ルクルはユノの言い方が気に入らず、おでこにデコピンする。
「っ!!」
「そういう自分を卑下する言い方はお止めなさい。あと、私のこれは癖ですのでお気になさらず。」
にっこり微笑むと、ユノはそれ以上何も言えずに黙り込む。
「あのっ!!」
アスタは滅多に会えない魔道士、しかも魔法帝の直属なのだ。聞きたくて仕方無かったことを聞く。
「俺でも………魔法帝に成れますかッッ!?」
「成れないと思います。」
バッサリと切り捨てられたアスタはショックの余り涙を流しながら膝を着く。
それを見たルクルは苦笑しながら口を開く。
「君のその夢は人に言われて成れるものですか?」
「━っ!」
「…夢は誰にも邪魔は出来ません。例え身分や魔力量の差があろうとも━━その者が諦めない限り、夢はつかめとれます。」
ルクルの言葉に目を輝かせた2人。
その目を見てもう一度2人に問う。
「2人の夢は何ですか?」
《━俺は魔法帝になるッッ!!》
それはアスタとユノがグリムワールを手にする、丁度1年前の事だった。
※『Dear you -hope-』より