夢物語 長編

□蒼天の舞姫 13
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黒の暴牛の噂をしている受験生の間をぬって、1人の女性がヤミに声をかける。

「━━ヤミ様、何をなさっているのですか。」

その声を聞いてヤミが振り向くと、呑気に返事をする。

「おーお嬢じゃねーか。どうした、ダンナについてなくていいのか。」

「ルクルさぁ〜ん!!今日もお美しい〜〜!!」

「ブツブツブツブツ…。」

「誰がお嬢ですか。フィンラルさん、ゴードンさん、こんにちわ。回復要員でこちらに派遣されましたが、来て早々仕事を増やすような事をしないで下さい。」

「そら、わりーことしたな。…まっ、お嬢にお仕置きされんのは勘弁だからな…チッ、命拾いしたな小僧。」

そういうと、ヤミはアスタから手を離しタバコをふかした。
団長と対等に話している女性を見て、受験生達は先程よりざわめきが大きくなった。

「お、おいっ!」

「あの方は…っ!」

「魔法帝直属、側近のルクル・ベルベットッッ!?何処の騎士団に属していないが、単独で侵略軍をクローバー王国の領土に何人たりとも近付けないというあの……ッ!!」

そう。この2年半でルクルは魔法騎士団長が全員出払ってしまい、侵略軍に直ぐに対応出来ない時に何度も退けていた。しかし、その瞬間を味方のクローバー王国の騎士団達は見たことが無く最初は半信半疑だったが、敵国より手配書にされたり、何度もの交戦でその驚異的な力に対し恐れられこう呼ばれている━━━"不抜の戦乙女"と。

オトメの力を余り見せるわけにはいかず、単独で行動した為謂われない言葉も受けたりしたが、今ではほとんどの騎士団がルクルの力を認めており、一部では尊敬の目を向けている程だ。

「あっ、ルクルさんッッ!?」

「…あの時のっ!」

ルクルは呼ばれた方に目を向けると1年半前……ハージ村で出会った少年達を見つけ微笑みかけた。

「まぁ、貴女達!宣言通り、夢の第一歩を受けに来たのね。」

《はいッッ!》

「えっ、何。お嬢知り合いなの?」

「はい、少し前にお会いして。…あっそういえば、あの時お名前を聞き忘れてました。お名前を聞いてもいいですか?」

「……いや、それ知り合いなのか?」

そんなヤミを無視して2人に顔を向けると、元気よく答えた。

「アスタですっ!あの時はありがとうございますっ!」

「ユノですっ」

「アスタ君にユノ君ですね。2人とも試験頑張って下さいね。」

ルクルはヤミに向き直りそろそろ時間だと告げる。━━が少し遅かったようだ。
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