夢物語 長編

□蒼天の舞姫 13
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ルクルはあれから受験生の回復に追われ、結局落ち着いたのは発表が終わってからだ。
会場入りの時に会ったアスタとユノも無事魔法騎士団入団を果たし、それぞれ黒の暴牛団、金色の夜明け団だ。
これからの2人の成長が楽しみである。

ルクルは受験生の処置が終わり、本部に帰ろうと回廊を歩いていると、前方に銀髪の後ろ姿が見えた。

(あれは…ノエル様とノゼル様?)

2人ともこちらに背を向けており、ノエルは小さくノゼルに一礼するとそのまま行ってしまった。
…シルヴァ家にはシルヴァ家の考え、しきたりがあるのだから部外者が口出しをしない方がいいのだろう。
だがノエルを見てると、昔の自分を見ているようでついつい口出ししてしまう。

「……あまり、辛く当たると本当に嫌われちゃいますよ?」

「…………お前か。」

ルクルは隣に並ぶと、苦笑しながらノゼルを見上げる。

「そんなお顔をするのなら、素直になりましたらいいでしょうに。」

「……………………。」

ルクルはノゼルがノエルに強く当たるのが本心では無いのをひょんな事から知ってしまい、こういう場面に出くわすとその度に一言言うが中々素直になれないお兄ちゃんである。
時間は係るだろうが、少しずつきょうだい仲良くなって欲しいものだ。

「では、私はお先に「待て」っ!」

ノゼルはルクルの言葉を遮り、腕を掴んで引き留めた。
急な事に驚いたルクルはノゼルを見つめ、言葉を待つ。

「………奴のことはいつから"さん"で呼んでいる。」

「…やつ?」

「…っ、フエゴレオンだ。」

「フエゴレオンさん…ですか?」

ルクルは少し疑問に思うが、何だかんだで団長達の前でフエゴレオンを呼ぶのが初めてと気付き口を開く。

「以前、ヴァーミリオン家にお邪魔しました時にメレオさんからそう呼ぶように言われまして…」

「メレオレオナが…?」

ノゼルはルクルが自分からやフエゴレオンからそう呼ぶように言われたわけではないと知り、少し安堵した。
それから考え込んでしまうノゼルにどうしたものかと思っていると、ノゼルは口を開く。

「…なら、私も様などいらん。あいつらが様が無いのだ、釣り合わないだろう。」

なんだが同じ様なことを以前にも聞いたなっと思いながら、ルクルは微笑みながらノゼルの名を呼ぶ。

「では、ノゼルさんっと。私もルクルで大丈夫です。」

「━あぁ、…ルクル。」

後に兄がさんで下の妹弟が様ではダメだと、それぞれネブラさん、ソリドさん、ノエルちゃんと呼ぶようになるのだった。(ノエルのちゃんは本人たっての希望だ。)



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