夢物語 長編
□蒼天の舞姫 14
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マーサは隣のお店に行き、落ち込んでいる背中に声をかける。
「残念だったね〜ルクルさんにいい人がいて!まぁ、紅茶屋の店主と魔法騎士団団長じゃぁ、勝ち目ないよね〜。」
「……うっせぇ。」
紅茶屋の店主、ダニエルの短い春は終わりを告げる。
(っと言っても、あれはルクルさん気づいて無いんだろうなぁ。意外と鈍い人?)
マーサはお客が来たので、自分の店に戻っていった。
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二人は並んで歩いていたが、フエゴレオンは先ほどマーサが言っていた事が気になってしまい会話処では無かった。
「…フエゴレオンさん、何処か体調でも悪いですか?」
「………いや。…………………ルクルはっ。」
「はい?」
「…………先ほどの店に、ノゼルとも行ったのか?」
「ノゼルさんですか?いえ、行ってませんが?」
「だが、先ほどの店主はシルヴァ家の方と来たと言っていたが…。」
「…あぁ!ノエルちゃんですね。」
思っても見てなかった名前にフエゴレオンは驚きながら口を開く。
「ノエル……一番下の娘か?」
「はい。この前ノゼルさんのお誕生日だったらしく、贈り物をしたいということでアッサムのテイスティングに一緒に来てたんです。」
「だが、あそこの兄妹は…。」
「えぇ。ですので、会議用の飲み物で出してくれと頼まれました。ノゼルさんにはノエルちゃんが選んだと知らせないでくれとも。…シルヴァ家は不器用な方が多くて困りますね。」
「そう…だったのか。」
それを聞き、フエゴレオンは自然と表情が緩んでいた。おまけにルクルに言わせれば王族も形無しだ。
フエゴレオンの表情が先程より緩み、大丈夫かなっと思いルクルは別の話題をふる。
「そういえば、フエゴレオンさん。今度の戦功叙勲式でレオ君の等級が上がるそうですね。」
「あぁ…子供だと思ってたが、成長は早いな。だがまだまだ鍛えねば、俺の代わりは任せられん。」
と言いつつ、フエゴレオンの表情は優しいものとなっている。やはり、歳の離れた弟は可愛いのだろう。
そう思っていると、ふと、フエゴレオンの右手を見て怪我しているのに気がつく。
擦り傷だが忙しく治療する暇が無かったのだろう、傷口は化膿しとびひみたいになっている。
ルクルは自然にその右手を掴み、回復魔法を施す。
「っ!!………ルクル?」
「駄目ですよ、小さな傷でもこの様に悪化することもありますので。」
「そうっ…だな、すまない。」
「いいえ、直ぐに治りますので。」