夢物語 長編

□蒼天の舞姫 9
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金色の夜明け団団長、ウィリアム・ヴァンジャンスは魔法帝の召集により本部へと来ていた。
しかし、いざユリウスの執務室に来てみたらそこはもぬけの殻である。側近のマルクスに尋ねると今もう一人の側近ルクルと一緒に本部の聖堂にいるという事で、そちらに向かっていた。

聖堂の近くに行くと微かにだが歌声が聞こえてくる。
その歌声に誘われるようにウィリアムは聖堂を覗くと、探し求めていた人物が穏やかな顔で女性の歌に聞き入っていた。

━━━ルクル・ベルベット

4ヶ月ほど前にユリウスから紹介された、遠い親戚の方だ。
あれから何度か団の方にルクルが来た時、当たり障りない会話はしたが、ただそれだけ。
だけど、会話を繰り返す後とに胸の辺りがザワザワする━━ルクルに会いたいような会いたくないような複雑な気持ち。

そんなことを考え混んでいたウィリアムにユリウスは気がつき、手招きをしてきた。
ウィリアムは戸惑いながらユリウスの横までくると、示された席に腰を落ち着ける。

「…すまないね、呼び出したのにこっちまで来てもらって。」

「…いえ、それは大丈夫ですが。彼女はいつもここで歌を?」

「いや?たまーに僕がリクエストして歌ってもらってるんだ。…ちゃんと仕事の目処がついてからだよ?」

茶目っ気たっぷりに言うユリウスに苦笑すると、ウィリアムはルクルに目を向けた。

丁度歌い終えたところで、ユリウスが静かに拍手をした。
ルクルはそれに気付きこちらを向くと、ユリウス以外の人物に少し驚き口を開く。

「ウィリアム様、お疲れ様です。本部へのご用でしたか?」

「やぁ、ルクル殿。ユリウス様に呼ばれてね。………歌がお上手なのですね。」

「ありがとうございます。そう言っていただけると嬉しいです。」

ルクルはユリウスに目線をやり、仕事の再開を促す。促したところですぐ仕事に戻った試しはないが……一応である。

「えぇー、あともう一曲だけっ!ウィリアムも聴きたいよねっ!」

「…そうですね、先程のは途中からしか聴けてないので。」

「ユリウス様……ウィリアム様を巻き込まないで下さい。」

そうは言ってもウィリアムからもリクエストがきたのだ。ルクルはピアノに手を添えると、旋律に乗せて語り始めた。
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