夢物語 長編
□蒼天の舞姫 10
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━どうしてこうなったんだろう…
ルクルは自分の膝の上で眠るフエゴレオンに、数時間前の自分の行動を振り返った。
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ルクルはユリウスの付き添いで、恵界外から王都に帰っていた。
途中深い崖があり何抜きなしに見ていると、崖の直ぐ側に人が倒れているのに気づく。
「ユリウス様、あそこに人が倒れてっ」
「おや?本当だっ…少し飛ばすよっ」
2人は急いで向かうと、倒れているのが年若い男だと気付いた。
「あれ?この子はヴァーミリオン家の…」
「ヴァーミリオン家…フエゴレオン様の親族の方で?」
「うん、そのまさか。フエゴレオンの弟でレオポルド君だよ。来年授与式を受ける予定だね。」
「では、魔法騎士団の方では無いのですね?任務ではないのに…どうしてこんな所をひとりで?」
「あ〜…なんとなーく、想像は着くけど。」
ユリウスは苦笑しながら立ち上がり通信機を取り出すと、本部の空間魔道士に迎えを頼むことにした。
まだグリムワールを持つ前の子を、ましてや王族の子息をこんな場所に置いてはおけない。
「ルクル君、すまないが彼をヴァーミリオン家まで送ってくれないか?そのまま今日は上がって貰って大丈夫だから。」
「かしこまりました。」
空間魔道士が到着しルクルは若い男━レオポルドを支えると、空間を通って王都に向かった。
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フエゴレオンはいつにもまして荒い足取りで、ヴァーミリオン家に向かっていた。
家の侍女よりレオポルドの行方が分からなくなったと、フエゴレオンに連絡がきたのだ。
大雑把の性格であるレオポルドだが、連絡は必ず入れるように言ってある…まさか、反王政派の手の者にかかったのか?
そんな気持ちばかりが急いでしまい、滅多に町中では使わない獅子で移動していたが、家の手前まで来ると見覚えある後ろ姿が目に入り声をかける。
「━姉上ッッ!!」
「…なんだ、派手な帰宅だな。」
姉上━メレオレオナは愚弟の姿に少し驚いてみせ、からかいの言葉をかけた。
「帰られてたのですね…いやっ今はそんな事より、レオポルドの行方が分からないのですッ!よもや、反王政派などに…ッッ!!」
「姉の久方ぶりの帰宅をそんな事よりとはなんだ、そんな事よりとはっ。それに…レオなら心配いらん。鍛練が終われば、時期に帰ってくるであろう。」
「ッッ!!姉上の仕業だったのですかッッ!?」
「仕業とは人聞きが悪い。強い獅子は子を崖から突き落とすと言うだろう?あれぐらい簡単にこなせなくては魔法騎士団など到底無理だ。」
「だからと言ってっ「フエゴレオン様っ!メレオレオナ様もっ!?」