夢物語 番外編

□蒼天の舞姫 番外編
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これはルクルがこの世界に来て、1年経った頃のお話。



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その日ユリウスのお供に海沿いの町、ラクエに来ていたルクルは潮風に当たりながらユリウスの用事が終わるのを待っていた。
何でも、王族の縁があるお方の孫の誕生日ということで魔法帝をパーティーに招待したのだ。
それで魔法帝を呼びつけるとはなんとう権力の無駄遣いと思われるが、そのお方がユリウスと親睦がある方だったらしい。
現在は魔法騎士団を引退しこの地で余生を過ごされているとのことで、積もる話もあるだろうとルクルは席を外したのである。

「綺麗な海ね……気持ちいい風。」

少し砂浜を歩いていると歌が聴こえてきた。
観光客か何かかな?っと歌が聴こえる方に向かっていると、まだあどけなさが残る少女がいた。
歌を一生懸命練習しているのだろう、同じ所を何度も練習している。

その必死な姿に幼い頃の自分と重ね合わせたルクルは、その少女の歌にハモりながら近づいていった。



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カホノはその日とても歌の調子が悪かった。原因はわかっている……親にアイドルになるというカホノの夢は無理だといい、神官魔道士としてもっと鍛練しろと言われたのだ。
親と喧嘩し海底神殿から飛び出してラクエの海岸で歌の練習に励むが、どうしても上手く歌えない。

何度も同じ所を練習していると、誰かの歌がハモり出す。驚いてそちらを振り向いたカホノは近づいてくる女の人を見つけた。
貴族の人だろうか?でも、嫌な気はしない。むしろずっと歌いたくなるような心地好さすら感じる。
2人は名も知らぬ同士でつい先程会ったばかりだが、何年も一緒にいたかな様に歌を歌いきった。

「………ありがとうっ!とても歌いやすかったっ!」

「いいえこちらこそ、素敵な歌声とデュエット出来て光栄です。」

「私、カホノっていうの!あなたは?」

「私はルクル・ベルベットといいます。」

「ルクルさん…ルクルさんはラクエの人ではないよね?」

「はい。普段は王都で仕事をしています。」

「王都ッッ!?」

カホノは王都に過剰に反応し、ルクルに詰め寄るように近く。カホノの勢いに驚いたルクルであったが、微笑みながら聞き返す。

「王都に興味がありますか?」

「うんっ!だって、私の夢は王都に行ってアイドルになることだからっ!だから、一生懸命、歌を練習…して……。」

そこまでいうと、カホノは俯いてしまう。

「……私で良ければ、お話お聞きしましょうか?」




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