夢物語 番外編

□蒼天の舞姫 番外編
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「う、美しいっ!」

「………えっと。」

「これほど、私の心を揺さぶるとは…。」

「…あの〜。」

「なんて、そなたは罪深い人なんだっ!!」

(どうしましょう、この状況……)

ルクルは目の前の青年にたじろいでいた。元の世界でもお目にかかったことの無いタイプの人間だ。ある意味希少な人だなっと考えていると、少女が走りよって来て目の前の青年に怒り始めた。

「━お兄様っ!!むやみやたらと人に絡まないで下さいっ!!」

「ミモザ、絡むとは人聞きの悪い。美しい者に美しいと言って何が悪いっ!!」

「……もういいです。申し訳ありません、兄がご迷惑御掛けしました。」

「…いえ、とんでもありません。出会い頭にぶつかったのを助けて頂きましたので。…そのローブは"珊瑚の孔雀団"の方ですね。私、魔法帝側近のルクル・ベルベットと申します。」

「あぁっ、貴女がっ!この前来て頂いたのに留守にしていて申し訳ない。珊瑚の孔雀団の副団長のキルシュ・ヴァーミリオンだ、以後お見知りおきを。」

「魔法帝直属のっ!私は………妹のミモザ・ヴァーミリオンと申しますわ。来年グリムワールの授与式ですので、まだ魔法騎士団には所属しておりません。」

(何だか"妹"と言うのに…葛藤がありましたね。)

ルクルはその様子に苦笑しながら、キルシュに声をかける。

「それはそうと、キルシュ様。何かお急ぎだったのでは?」

「っ!私としたことがうっかりしていた。また何処かでお会いしよう、ルクル殿。」

キルシュは綺麗にウィンクしてみるとその場に去っていった。
珊瑚の孔雀団団長に変わって、団の実務をほぼ全てしていると聞く。あぁ見えて、とてもしっかりしていらっしゃるのだ………たぶん。

「本当に申し訳ありませんわ。ルクルさん……。」

「私は大丈夫ですよ、ミモザ様。では、私も失礼しますね。」

ルクルも本部に戻ろうとしたが、ミモザに呼び止められた。

「…あのっ!……どうして魔法騎士団の方に入らなかったのですか?」

「…えっ?」

ミモザを見ると真剣な眼差しでルクルを見ている。
ルクルにとって魔法騎士団に入るか入らないかなど、ユリウスのオトメとなった時点で余り重要なことでは無かった。だが、強いて理由を述べるなら…。

「━自分で納得して、魔法帝側近になると自分で決めたからです。」

「っ!」
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