忘れなれない人

□第1話
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大好き

子供ながらに本気で思ってた
大好きで大好きで仕方なかった

でも幼なじみのあの人にとって俺なんてただの弟みたいな存在でただ遊ばれてただけで男として見られるわけもなくて
6歳年上の彼女はだんだん遠い存在になっていった





別れよ。夢莉のことやっぱ弟としてしか見られへん…。

そう伝えられた4年前の中学3年の時

俺ははじめて失恋した。


そしてその日から彼女と会うことも話す事もなくなった

かぁーさんには新しい彼氏ができたらしいという話を聞いた

別にあの人が悪いわけでもないのに
子供だった俺が悪いのに勝手に裏切られた気分になって恨んで憎んで俺から避けるようになった








「うぃっす〜夢莉おはよ!!」

「おう」

「相変わらずクールだね〜」

「うっさいわ」

そう話しかけて来たのは幼なじみの百花。

昔はよくあの人と百花と3人で一緒に居たな

「今日学校終わったら映画行こうぜ」

「わりぃ今日は用事」

「また女か?チャラいね〜」

「百花だけには言われたくないわ」

「俺はチャラいんじゃなくて女の子みんな大好きなだけや」

「だからそれがチャラいんやろ!!」

そんな馬鹿な話をしている時前から来る人から目が離せなくなり体が固まった

「なんで…」

そこにはもう4年近く会っていなかった人が立っていた

4年前に比べてより綺麗になって大人の女性感が漂っていた
でも一目で彼女だとわかった

「え、あれって…」

「百花行こう」

バレる前にと百花を連れ教室に逃げ込むように入った

「夢莉!!あれって…彩ちゃん…よな?」

「あぁ…たぶん…ってか絶対そう」

「まじか…4年ぶりくらい?」

「しらん。忘れた」

そう言ったけど百花には通用するわけもなく鼻で笑われた

教室に入り席に着くと周りがざわめき出す


「今日から新しい先生来るねんて!!」

そんな声がしすぐにあの人のことだとわかった

昔から将来は教師になりたいと言っていたから

夢叶えたんやな

俺はあの人と話さなくなったあの日から毎日が楽しくなくてただ呆然と毎日を過ごしていた

好きだと言い寄ってくる女は沢山いたけど適当に抱き適当に捨てまた適当に違う女を抱く

高校3年ながらに悲惨な人生や

それも全部あいつが悪い
そんな風に思ってしまう自分が一番惨めなのはわかってた

「はーい席に着け〜」

そう担任の声がしみんな一斉に席につく

「今日からこのクラスの副担任になる先生を紹介する。入って」

その声と共にあの人が入ってきた

「はじめまして、今日からこのクラスの副担任になる山本彩です。今年が1年目なのでわからない事もあるけどみんなよろしくね」

小さくて細い体、笑うとニャンちゅうみたいな線が行くとこ、男にも女にも関わらず人気なとこ…昔となんも変わってなかった


あの人が挨拶を終えるとみんな拍手をし色々質問が飛び交う

「先生!結婚してるんですか?」

その質問に目線を下にすると薬指に光るものを見つけた

結婚したんや

よかったな


俺には関係ない。
これから先関わることもない。
先生を見て胸が苦しくなったりドキドキしたり悲しくなったり辛くなったり嬉しくなったりすることもない

俺にとってあの人は亡霊で居ても居なくても変わらない。
今更何があったって好きになることなんてない。

本気でそう思ってた


ボーッと一番後ろの席から先生を見ていたらふと目が合う

俺を観た瞬間少し驚いたような悲しそうなよくわからない顔をしていた

「お…い、なぁ!夢莉!!」

「お…なに?」

隣の席に座る百花に話しかけられボーとしていた意識が戻る


「大丈夫か?」

「あぁ…大丈夫。俺ちょっと屋上いってくるわ」


百花に一言声をかけ席を立つ。


「おい、太田どこいくんや?」

「あーなんか気分悪いんで屋上で一眠りしてくるっすわ」

担任に適当に返事を返し教室を出ようとするとあの人に声をかけられた


「太田くん…?大丈夫?保健室いく?」

そんな優しい顔で言ってくんなよ腹立つな

イライラした感情を押し殺し返事をした

「なんかあんたの顔みたら急に気分悪くなってきたんでただのサボりっすよ。じゃ」

そう言い残しざわつく教室を後にした


一人で屋上に向かいいつもの定位置に腰を下ろす

イライラした感情もここから見上げる空を見ていると落ち着いた

青くて広くて綺麗な空

俺も人間じゃなくて空になりたかったと思う

ただボーッと空を見つめ時間が過ぎるのを待つ

今日からずっと学校に来るたびあの人と会うと思うと憂鬱でしかたなかった

屋上の扉が開く音がし静かに足音が響く

珍しいな滅多に屋上に人が来ることなんてないのに

振り向くことなくそのまま空を見つめていると一番聴きたくなかった声が聞こえた


「久しぶり…夢莉やんな…?」

夢莉やんな?ってなんやねん

俺は一度もあんたのことを忘れたことなんてなかった

好きだった感情は怒り恨み憎しみに変わっていた

「誰ですか?どこかでお会いしたことありましたっけ?」

自分でも餓鬼だなと思う言葉が次々簡単に溢れ出す


ふとあの人の方を見るとなんとも言えない表情をしていた

「なんであんたがそんな顔すんの?」

「夢莉あの時はごめっ!!「今更なに?俺に何の用があるん?」

「…」


「結婚したんやな。おめでとう。これからも俺とあんたはただの生徒と教師ただそれだけ…昔の話なんてすんな。じゃな」

そう言い残し俺は屋上を後にした

まだなんか言いたげそうな顔をしたあの人を残して


あの時もそうやったな…

別れを告げられた時も一方的に感情をぶつけて逃げた

イラつく


思い出したくもないことが次々と頭の中に出てきてその感情をどうすることもできなくて一旦教室に戻りその後の授業をなんとか乗り越えた
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