忘れなれない人

□第5話
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俺は今超絶ピンチに立たされてる

俺の家庭は俺、おかん、おとんの3人家族で幼い頃からありがたいことに何不自由なく過ごさせてもらった

お父さんは建築会社の社長でお母さんは専業主婦。
周りから見てもいい家庭だと思う

俺はおとんの仕事を手伝いたくて中学卒業の間近の時頼んでみたけど、高校は卒業しろと言われ仕方なく高校に入ったそしてもぉすぐ卒業の時。
おとんにもう一度その話をするとお前は頭がいい無理に俺の仕事なんてせずに大学に行けと言われた


俺は別に無理におとんの仕事を継ごうと思ってるわけじゃない。

ただ幼い頃から見てたしかっこいいなとも思ってたし何より手っ取り早く仕事を教えてもらえる。
この上なくいい環境で。

だけどおとんに出された条件は高校を卒業して大学に進学して自分の夢を見つけるか、おとんの会社で1日中雑用3年続けてから仕事を教えてもらうかだった

はっきり言って最初から本格的に仕事をさせてもらえると思っていた俺からしたら予想外の展開で究極の選択を迫られていた

そして担任からもそろそろ本気で真剣に考えろと何度も呼び出しをくらっていた


俺にどーしろって言うねん

はっきり言って周りに決められる人生なんてまっぴらごめんだった

何か目標でもあればすんなり決めれるのかもしれんけど、今の俺にはこれといって目標もなかった

「うぃ夢莉、お前結局どーすんの?進路」

「おー百花おつかれ。まだ決めてへんねんまじで究極の選択迫られててさ」

百花におとんから出された条件を話すと百花の表情が変わった

「お前進路のこともやけど彩ちゃんのことはもうええん?」

「は?なに急に今の話になんの関係もないやん笑」

「俺この前帰る時呼ばれて二人で話してん」

「そーなんや。で?俺にどないしろって?」

「彩ちゃんめっちゃ辛そうやったで。4年前の話しちゃんと聞いてあげたことあるん?」

「あるわけないやん。ってか今更なにを話すことがあるん?あの人が俺のこと弟してしか見てなかった、んで別れてちゃう人と付き合って今では結婚もしてる。話すことなんてなくない?」

「それは全部お前の決めつけやろ。なにがあったか、今どーなってんのかなんで聞いてあげようとせーへんねん」

「それは…!!!」

「もぉ俺ら18やで?あの時のガキじゃない。もうすぐ大人や。全部全部決めつけんとちょっとは話し聞いてあげたら?」

「もぉ怖いねん…。知ってるやろ。あん時みたいな思いはもうしたくないねん。あの人の顔を見るとあの時の瞬間が鮮明に頭に浮かんでくるねん。それで苦しくなる」

「だっさーそれでも男かよ。んな俺遠慮なく彩ちゃんのこともらうな。俺は彼氏が居ようがいなかまいが関係ない。好きなら傷つく覚悟で奪いに行く」

「は?」

「お前がずっと好きなの知ってたし二人が付き合えた時よかったって思った。だから自分の気持ちはしまっとこって…二人とも大好きやったから」

「百花お前…」

「そうやで…俺はずっと彩ちゃんが好きやった。お前にもうその気がないなら俺は全力で奪いに行く」

それだけ言い残して百花は帰って行った


まさかの展開やねんけど、なにこれ
百花があいつのこと好きやったとか初耳やねんけど

じゃなに?そうとも知らずに俺は呑気にあいつと付き合って振られて別れて今では恨んで憎んで

百花は本当に好きなあいつに気持ち伝えれへん変わりに色んな女で遊んで気を紛らわせてたってこと?

そら百花からしたら腹立つな

やけど今の俺に何ができる?

素直にあの人を受け入れることもできん

今では好きって感情があるのかもわからん

むしろ憎んでるってことは嫌いってことやし

そんなはっきりしない自分の感情にもとことんイラつく


俺もそろそろ帰ろうと教室を出ると前から歩いてくるあの人と目があった

まじかよなんでこのタイミングで…

仕方なし引き下がることもできなくて俺はあの人の方へと歩いて行った

「太田くん…遅いな。今帰り?」

「あぁ…。おん」

「気をつけてね」

そう言って通り過ぎようとするあの人の手を反射的に掴んでしまった


俺なにしてんねん!!どうする?え?ここからどうするつもりで掴んだん?

自分でもなんでこんなことしたのはわからないけど適当にごまかした

「あ、ごめん、なんもない。じゃ」

「なんか!!なんかあったんじゃないん…?」

「別に…」

「そっか。あのさ…もしよかったら一緒に帰らん?私今日久々実家帰るねん…」

は?なんで?結婚してるのに実家帰る?離婚?んなわけないか久々の帰省ってやつやな

「まぁ帰るくらいならええで」

そういうと嬉しそうに笑う彼女の顔が昔と変わっていなくてドキッとする

危ない危ない

思わず昔の感情が蘇りそうになったのを必死で戻す

「じゃ俺裏門でたところで待ってるわ」

「わかった帰る支度したらすぐいく」

まるでずっと買ってもらえなかったおもちゃを買ってもらえる時の子供のようなはしゃぎ方に思わず笑みが溢れそうになった

少しして校舎から歩いてくるあの人が見えた

「ごめんお待たせ…」

さっきまであんな嬉しそうやったのに今は下を俯いて目を合わせない

この短時間でなにがあってん


「別にそんな待ってへん、ってかなんでそんな下向いとん?」

「なんか久々すぎて緊張するっていうか恥ずかしい」

なにそれ

こういうの誰にでも言ってんねやろな

「あんまそーゆーの言わん方がええで、アホな男なら勘違いするから」

そこからは二人とも一言も喋らずただ家に向かって歩いた


さすがにこの無言に耐えれなくなり俺が先に口を開いた

「なんで実家?旦那さん一人でおいてきたん?」

「え?旦那…?私結婚してないねんけど…」

「え?でも指輪…」

「あれは彼氏からもらったペアリング」

「そーなんや」

「でももう別れちゃったけどこの前」

まさかの展開に連発やねんけど…

え?結婚してないん?俺の勘違い?全然頭がついていかへん

「あーそーなんや、じゃ俺と付き合うか?」

「え!?」

「うそ。冗談に決まってるやろ。じゃな」

どーしてこんなことを言ってしまったのか。
自分も辛い思いをしたのにそれと同じことをあんなに好きだった人にしてしまったのか自分でもわからないけど、もう二度とあんな思いはしたくなかった。

一緒にいることで、笑ってる顔や喜んでる顔や幸せそうな顔や泣いてる顔を見てまた好きになるのが怖かった

俺はあの人とはもう付き合えない
向き合えない

所詮俺は弱い男。
なにをゆわれたってどーすることもできなかった


百花があいつのことを好きなら付き合えばいい

それで二人が幸せになるならそれでいいやん

今更迷うことなんてない

苦しむことなんてない


次の日朝百花に呼ばれた

「なに?」

「どーするか考えたか?」

「あー昨日の話?付き合えば?幸せにしてあげればええやん、お前が」

「はぁ。わかった。それがお前の答えなら俺は遠慮せんとくな」


そしてその日から百花とあの人が話す頻度も一緒に居る頻度も多くなった

見る限りお互い楽しそうに笑っててうまくいくんやなって思った

帰り道たまに二人で歩きながら帰る姿を見かけた

彼氏と別れてからあの人は学校に近い実家に戻ることになったらしい。

あの人の実家と俺の家は向かいやから嫌でも会うことがあった

そのたび俺は声をかけないしあの人もいっさい俺に声をかけてくることもなくなった。

やっぱり所詮そんなもん

俺と本気で向き合いたいなら傷ついてでも話しかけてくるやろ

そうしないってことはあの人にとって俺もそんな大きい存在ではないってことや

それがわかった今やっぱりあの時向き合わなくてよかったと心底思った
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