短編
□忘れられない人
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彩ちゃんside
夢莉と別れてから私は少しの間本当に抜け殻のようになっていた
シンガソングライターになってこれからだって時だったのにそのタイミングでの別れ
正直すごく苦しかったけど今は前向きに過ごせている
最後に夢莉に向けて書いた歌。追憶の光も発売され夢莉に届いていたらいいなと思う
私はもう思い出さない。
強くなるんや
プルルルル♪
ん?誰や
携帯の画面を見ると吉田朱里そう記されていた
朱里?どうしたんやろ
「もしもし」
「あ!さや姉?」
「さや姉?って私に電話してきたんやろ?笑」
「そうやけどってそんなことはどーでもいいねん!!夢莉のことはもういいん?」
「なんやねん急に…もうそのことはいいから終わった話やろ」
「夢莉りなちーと付き合ったで」
「え…」
「ほんまに好きなんかそうじゃないんかは本人にしかわからんけど、少なからずりなちーは夢莉のこと大好きやからな。それはさや姉もよく知ってるやろ。もしこのまま夢莉もりなちーのこと本気で好きなったらもう戻られへんで。よく考えや。それじゃ」
プチっ
急に電話してきて一方的に電話切るなよ…
しかも全然嬉しくない報告付きで
はぁほんまもぉ嫌なる。
やっと前向きになれてるところやったのに
この胸の苦しさが始まるとまた何日も苦しめられるのに
あの優しい笑顔も笑うと目がなくなって口を手で覆う仕草も香水とかではなく夢莉の匂いも細くて長い綺麗な手も今では全部他の人の物だと思うと苦しくて仕方がない
こんな思いをするなら最初から出会いたくなんてなかった
好きになりたくなんてなかった
はじめは夢莉の方から私を好きだと必要だと言ってくれてたけど、いつの間にか私の方が夢莉を必要としていたんだと改めて思う
夢莉…?
あなたはもう私のことは忘れましたか?
もう無かったことになってますか…?
私は今もこれから先も夢莉のことを忘れることはできなさそうです
もう一度…もう一度だけ会いたい
そしてさやかちゃんは大丈夫だよって前みたいに抱きしめてほしい
優しく…でも力強く…
そんな儚い夢のような話を願いながら
その日は止まることを知らない涙を流して一睡もできなかった