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□シアワセ-after story-
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滝川「なんだ、今の」
滝川に用意されていたテーブルに一枚のメッセージカードがおかれていた。
それを開くと田村、速水、自分、神の姿が脳裏を駆け巡った。
滝川「田村さんが、速水さんと入れ替わってた?それじゃ、今まで俺が世話になっていたのは田村さんで、さっきまであそこにいたのは…。それに、今の光景…、ミカちゃんが先輩を…!」
神「おーっとこれ見てそこまで冷静とは、意外とやるねぇあんた」
滝川「お前が、神«シン»?」
神「そーだよん」
滝川「速水さんは、田村さんは?ミカちゃんも、みんな血だらだった」
神「死んだよ。全員。あとはお前だけだ」
滝川「俺も殺されるのか」
神「そのつもりだったんだけどー、やっぱやめた」
滝川「はぁ?」
神「お前にすべての記憶を渡し、生かしておく。」
滝川「なにがしたいんだ」
神「田村と速水の寿命、まだ残ってんだよね。ミカって女もだいぶ時間残したまましんだらかさー。それ全部お前にやるよ」
滝川「残ってるなら、先輩たちに返せよ!生き返らせて、本当に幸せにさせてやってくれよ!」
神「嫌だ」
滝川「だったら捨てろ。俺はそんなものいらない。」
神「嫌だ」
滝川「なんなんだよお前!幸せにしてやるってさんざん夢見させておいて、誰一人も幸せになんかなっちゃいない。おちょくって遊んで、全員を不幸にして!」
神「あんたには幸せになって欲しい。」
滝川「何、言ってるんだ?」
神「田村は幸せから目を背け、速水は自分の幸せを認めなかった。ミカは現実を見ずに闇雲に幸せを求めた。全員、真正面から幸せと向き合おうとしなかった。ただ与えられるものに身を流しただけ。その結果があれだ。」
滝川「誰だって、そんなもんだろ。幸せにはなりたいって思いながら、迷って、生きていくもんだろ」
神「大半の人間はそうかもしれない。けどあんたは自分は幸せになるって本気で思ってる。常に努力し続け、向き合い、進もうとしてる。そんなやつが本当に幸せになれるか気になるじゃないか!」
滝川「田村さんの次は、俺をオモチャにしようってのか」
神「その通り。お前に残りのすべてをやる。与えられたものに身を流さずに、最後まで幸せと向き合うかどうか見届ける。次はそれを俺の暇つぶしとする!せいぜい楽しませてくれよ?」
神はそう言い残してその場から消えた。
滝川はしばらく神がいた場所を見つめた。
それからどれくらいか経った頃、ぐっと口を閉じ、振り向いて、外へと歩き出した。