四神天地書

□第壱章
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「陽茉莉。」


呼ばれていくと太一君はいつもの格好で待っていた。

昔は子供だったりいろんな姿だったけれどなんだかんだ言ってこれが一番ださいと思う。

お婆ちゃんになるなんてどうかしてるよほんとうに。

そんな考えを見透かされたのか部屋にはいるなりじろりとにらまれそれを見なかったことにした。


「さて、先ほど朱雀の巫女と青龍の巫女がこの地に降り立ったことは気づいておるな?

すぐに戻ったことも。」


「はい。」


「また、時期にこちらに来るじゃろう。

青龍の側はお主はつかないのは分かっておるが、巫女については気を付けてみておくのじゃ。

青龍だとしても巫女は巫女。

あちらの巫女が危機に見舞われたなら、身代わりとなるじゃろう。」


と、太一君は言った。

それくらい理解しているが、こちらの人は心配なのだろうか。わざわざ釘を指して。

青龍の巫女も守らなければいけない存在だ。

でも、そもそもこの世界の闇と倶東国は通じてしまっているわけで。

太一君が関われない以上こちらとしてはどうしようもないと言うのが現状だ。


「分かりました。
今回も私が見極めるのですか?」


「いや、今回は試してもらう。
巫女にふさわしい人間かどうか。どちらにせよこの太極山には訪れることとなる。

その折に好きなように試せ。」


「分かりました。」


いつもは巫女に会ってからふさわしいかどうか判断していたけれど、今回はその暇がないと言うことか。

倶東国はすぐに集めてしまいそうだし、そうなるのか。

守ることが出来るかどうかもわからないなとにかくやるしかないだろう。


巫女を守るために。

この世界のために。

全ては、わたしの宿命であるために。



どのように死んだのかも、誰と生きていた人間なのかも私は忘れてしまった。

分かるのはわたしの帰る場所はもはや存在しないと言うことぐらい。

何故自分が男嫌いと言うのも分からないし。
嫌いなことぐらいは分かる。

なんかこう拒否反応的な感じで出てしまうのだから。

人でなくなっていく私はどうなってしまうのだろうか。
また、人として生まれることが出来るのだろうか。

それともこの世界で永遠に暮らしていくのだろうか。


別に構わないけれど、それはきっと寂しいことなんだろう。

自分のことも、自分の家族も何も知らぬままに生きていくなんて。


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