四神天地書
□第壱章
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この世界に来てから200年が経った。
多喜ちゃんからこの世界と向こうの世界は時間軸が違うときいているけど、どうなのだろう。
あと二人、巫女が来る。
私は当の昔に殺されているし、別にあちらの世界に戻りたいとも何も感じやしないけれど。
どんな巫女が選ばれてくるのだろうか。
出来ることならしたくないのが本音だ。召喚しても幸せになるとは限らないし何よりも次の召喚はきっと異例になる。
七星士たちが同じ年代に揃っているから。
多分、巫女も同じタイミングで入ってくるはずだ。
死んでいく人もいるし、私もこの世界で一度死んでいるし。
これが私の役目でやりとおさなければならないことだとしても気は進まない。
「陽茉莉!
どうしたね?」
「なんでもないです、娘娘。
ただ、もうそろそろだろうなぁって思っただけですから。」
心配してくれた娘娘にそう返した。
ちゃんとした巫女でなければ私は認める気がない。
守ることが仕事でもそれくらい選びたいものだ。
そりゃあ、この世界にはちょっとくらい、思い入れもあるけれど。
そのぶん考えることもある。
「陽茉莉なら大丈夫ね!
最後までやりきることが出来ると思うね!」
「ありがとうございます。」
そう返し、私は机にといてある短刀の手入れを始めた。
一応女であるけれども男が嫌いだからずっと男の格好をしている。と言うかこっちのが楽だし。
変に寄ってくるやつらは一体なんなのやら。
こればかりは何年経とうと分かりそうにない。
そう思いながら短刀を磨いていると不意に気が感じられた。二人ぶんの。
やっぱり巫女は二人同時だったのか。
面倒なことになりそうだな。
同時と言うのは少なくとも知り合いではあるだろうし、片方ずつ倶東国と紅南国に別れるから敵どうしになる。
倶東国につくことはないから必然と紅南国となるけれど、どうなのだろう。
そう考えているとさっきまで感じられていた気配が消えていた。
もう元の世界に戻ったのか。
まぁ、はじめの時期は不安定とも聞くしな。術者には少なくとも分かっているだろうしいつ面倒な戦争が始まるのやら。
どのようなことになろうとも、次の二つの召喚が終われば私はいなくなるだろう。
太一君は教えてくれないしわからないけれど。
どんな人が巫女なのか、少しばかり楽しみになった。