四神天地書
□第弐章
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それから数日後。
急に体が怠くなった。
巫女が風邪でも引いたのかなんの前触れもなく。
ゆっくりと呼吸をしながら落ち着かせて巫女を待った。
そろそろ来るはずだ。
試す方法も考えてあるし、どうにかしてやらないといけない。
それから熱が落ち着いて、巫女の気が近づいてきた。
まだ頭が痛いけれど落ち着いてきた。
これから始まるのがわたしの役目。
巫女と七星士を助けて、守る。
何を賭けてでも決して死なせないように、儀式を遂行するように。
この世界に、平和が訪れるように。
私は、昔はどんなところで生きていたのかな。
誰と暮らして、どんなものが好きだったのかな。
自分に対して分かっていることは、女で二十歳から年を取らなくて、自分でもおかしいくらい男が嫌いと言うこと。
自分を待っている人も、いないであろうし、そもそも私は死んでいることになっている。
私はどうなってしまうのかな。
誰かと幸せになる、何てことは不可能だし、誰かと生きて幸せになることを誰も望んじゃくれないだろう。
こんな人間だから。
そもそも、人ですらないだろうから。
やはり、わたしはわたしの責務を果たすのみ。
朱雀の巫女が大分近づいたので鏡を用意した。事前の調べで食い意地を張っているのは分かっているので誘き寄せるように食べ物を出した。
するとまぁ、面白いようにつられてやってきて。
この子本当に熱出てるんだよな。
「あれ?」
あ、気づいた。
そろそろ術で巫女になって近づくとするか。
騒ぎ出すだろうし。
「何コレちょっと!!」
「鏡の中へようこそ。美朱。
ホンット食い意地張った女ねェ。
我ながら情けないわ!!」
とかなんとか偉そうに言ったらそういう風な感じが出るだろう。
見た通り巫女はやはり驚いている。
この話し方は慣れんが仕方ない。
「な…何よあんた…。」
「あたし?
あたしはあんたよ。
鏡に写ったあんた!」
「あたしはあんた?
あたしはあたしであんたはあたしであたしがあんた…。」
こんがらがっているようだ。
この子、頭大丈夫かな。
結構悪そうだけど問題ないの? バカなのでは?
そんなことをしていると、巫女を呼ぶ声がしてきた。
「鬼宿!!」
「ジャマよ!」
気は進まないが巫女をふんずけて黙らせた。
試練のため、試練のため。
仕方のないことなんだ。
「あんたはそこで好きなだけ食ってな!」
「イヤよ出してよ!」
「ヤーよ!
あたしはね、星宿が好きなの!あんな鬼宿なんかよりね!
だから彼とずーっとここでくらすの!
あたし元の世界なわてもどりたくないもの。なんでわざわざイヤな受験しに帰るワケ?
学校も塾も二度と行くもんか!
今度はあんたが影になって鏡の中で見てる番よ!」
そう言って外に出た。
こういうところもあの太一君はちゃんと見ているだろう。
やれるだけのことはやって、巫女の反応を楽しもう。
どんな巫女なのか気になるし、この子を守るために私はいるのだからそれぐらいやってもバチは当たらないさ。
そう思いながら合流した。