四神天地書
□第弐章
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探している七星士の元に行き、巫女の代わりに請け負ったダルさをごまかしながら笑った。
巫女はどうやらもう万全の体調のようだしよかった。
請け負うのならちゃんと全部請け負わないと意味がないからね。
「なんだどこへ行ってたンだお前!」
「うん…ちょっとねめずらしい鏡を見つけたの。
心配した?
鬼宿。」
「べ…別に…。」
そう答えた鬼宿はどうやら違和感を覚えているらしい。
まぁ、完全に巫女の真似をしているわけではないのだしバレるだろう。
問題はそのあとどう動くのか、なんだから。
「でも良かった無事で!」
「うん!ごめんねダーリン🖤」
そうすると柳宿は面白いように反応した。こちらとてこんなことやりたかないよ。
はよはなれたいわ。
抱きつきたいわけねぇじゃん。
そんな言い訳をしながらスッと離れて柳宿にまた言葉を吐いた。
「みっみっ、美朱!!
あんたっ…。」
「あら柳宿なんか文句ある?
あんたもさっさと星宿のこと諦めたら?バッカみたい。
男のくせに。」
「お…お…男!?」
「ま…まさか!」
星宿はなんか他にも言っていたが聞こえないふりして柳宿を見た。
わなわなと震えて後ろを振り向いたと思ったら近くにある木をなぎ倒しながら去っていった。
「ひどいわーっ!!」
すごいなあの怪力。
いや、私も使えるけどね。あんまり試してないし。
てか自分でばらしてるよね。
否定しないのか。
「さっきの話の続き…私あなたと一緒なら帰らなくてもいーのよ。
もう太一君のところなんか行くのやめようよ。
私のことすきなんでしょ。
私もあなたが好き…。
ほしかったらあげるよ!」
そう言って星宿に迫った。
この方法が一番いいと言う風に落ち着いたがやっぱりやだ。
体から沸き上がってくる震えを、何もかもをごまかしてかなり必死にやっている。
怖いよ。
何でなんだろう。
やっぱり前世と関係するのかな。そんなくだらないことを考えていると星宿は私を離した。
そして、剣を向けた。
「…貴様何者だ!
私の知ってる美朱はそのような娘ではない。正体を見せろ!」
ばれちゃったか。
接吻せずにすんだことに安心しながらくすくすと笑った。
怪しんでいるようだ。
本当の試練は、ここから始まる。
巫女がどう動くのか、この七星士たちは何をするのか。
私を倒すことでは巫女は救えない。
「用心しろ鬼宿!」
「本物の美朱はどこだ!」
「いるじゃない目の前に!
あたしは美朱の影…美朱自身だもん!
ま、しょせんこんなバラバラの4人で太一君のところへつけるわけないのよ。」
「たわけたことを…。」
そう言いながら振りかぶる星宿たちに向かって鏡をかざした。
光を使って力を奪った。
取りあえず奪った力は自分の力にしておく。巫女の身代わりのお陰で体力の消耗が思ったよりも早い。
早く済ませないと、怒られちゃうし。
それに、だんだんと頭痛もひどくなってきている。
「あんたたちの好きな美朱はこの鏡の中よ。
どーせあんた達は美朱を守るために生きてるんでしょ。
力をもらったって当然よねェ…美朱!」
この子が、巫女が羨ましいな。
そう不意に思った。守ってくれる人がいて、愛してくれる人がいて。
私には帰る場所も、待っている人も、もしかしたらいたかもしれない愛する人も、いない。
どこにも居場所がないようで無償に寂しくなる。
巫女や七星士たちはいつも優しかったけれど、私はやっぱり虚しいままだった。
人が死に行くのを見届けるばかりで。
誰にも、死んでほしくないなぁ。
「出来るもんなら助けてみなさいよ。
『朱雀の巫女』さん。」