四神天地書

□第弐章
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そう言うと巫女は鏡の中で何かをした。


途端、私の胸から血が出てきた。

鋭い痛み。
左側、でも心臓はなんとかそれてる。こんなことするなんて、予想はつかなかった。

と言うよりバカなのか、この子は。

自分の身も考えずに。
下手すれば死ぬぞ、それぐらいわかるだろう。実際死ぬのは私だけど。


もう体が耐えきれなくなり咄嗟に別の人形を作って私と入れ換えた。

そうした瞬間人形の方は殴られたり潰されたりと災難続き。
入れ替わってほんとよかった。

こんなとこで死ぬわけにはいかないものね。


朱雀の巫女はすぐに怪我が治っていた。まぁ、血は足りないだろうが身代わりが発動したんだろう。

あの子の怪我は重いものであれば私に降りかかる。
太一君が適当に言い訳をしてくれるだろう。井宿の方には…適当に言っておこう。


ああ、血が足りない。

頭いたいし、怠いし最悪だ。
そう思いながら何とか大極山に戻った。

戻って早々、顔をだしたのは井宿だった。


「…陽茉莉!
どうしたのだ!?」


「…大丈夫です。
ちょっと、へましただけですから。」


そう言うも、流石に疲れているのかふらついてしまった。

井宿が支えてくれたから、なんとか倒れなかったけれど。まだ、やることがある。
だから、気を失うわけにはいかない。


「無茶をするなと言ったのだ!
こんな怪我をして…。すぐに娘娘を呼ぶのだ。」


井宿は私を寝台に横たわらせて去っていった。
体力がないから七星士の力も使えないし大人しくしているのがいいだろう。

井宿の手は気持ち悪くなかった。

何でなんだろう。
男は嫌いなのに。なれているからなのかな。

七年前に、助けてからずっと同じ日々を過ごしているから。

当然なのか。

彼は優しいし、私もそれをわかっている。なれるまでは大変だったけれど。彼は、何も知らない。

私のことも守護神のことも。

知ってしまったら彼はなんと言うだろう。


心配してくれるのだろうか。


こんな私に?

あり得ない。


「陽茉莉!
治療しに来たね!治療したら太一君が呼んでるね!」


娘娘はそう言って怪我を治してくれた。血は足りないみたいだけれど、大丈夫だろう。

気から、巫女の方は輸血したようだし。

多少の怠さは残っているものの、死ぬわけではない。


「井宿が心配してたね!
無茶するのはダメ!昔から娘娘も言ってるね!

陽茉莉は女の子だから!」


娘娘はそう言ってくれた。

心配の声はくすぐったくて、どう反応すればいいのかわからない。

私はそんな立派な人間ではないから。

心配しなくてもいいのに。


そう思いながら太一君のところに向かった。
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