乃木坂

□生徒会室で君と二人。
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「久保会長〜ちゃんとしてくださいよ。」

「だってぇ。あんな大人数いる中で喋るなんて無理だよ」

なんて今にも泣きそうな史緒里。
最初はなんで、この子が生徒会長になったんだろうって毎回思ってて前に一回だけ彼女を尾行したことがあるんだけど、なんとお金持ちだった。

その時は、お金持ちだから選ばれたんだ。
なんて皮肉にしか考えられない私だったけど今は違う。
ちゃんと生徒会のメンバーを指示してちゃんと生徒の意見も聞けるけど、一つ問題があるとすれば私がいないと人前に出ないことだ。



一回だけ私が風邪で学校休んだ日にちょうど人前に出る機会があって鬼のように電話がかかってきて無視してたら次はトークにまで送ってくるという悲劇。

なんとトークを開くと999+になっていてどんだけだよ…なんて思いつつ何度目かの電話がかかってきて仕方なくでる。

「…もしもし」

「山下さん!なんで学校休んだの…!?もしかしてサボり??」

「…ゴホッ。なわけないでしょ。普通に風邪引きました」

「えぇ!?大丈夫?今から私がお見舞いに行こうか?」

「久保会長…。今日は"あれ"がある日なのでダメです」

「…バレた。だってぇ山下さんがいないと無理無理ー!」

「…そういうことなので私は寝るので頑張ってください!」



なんてことがあったなぁ。思い出に浸る。
その間にも隣でぶつぶつお経のように何かを言い続ける史緒里を横目にあくびをする。

「ほら久保会長、出番なので行きますよ」

「うぅ。」

「ほらネクタイちゃんとしてビシッとしてください!」

「…わかった。」

気持ちを切り替えて今までとは違うビシッとする史緒里。いつもビシッとしてくれたらいいのに…なんて思いながら会長の後ろをくっついていく。

「…我が校は__________」

壇上に立つとちゃんと生徒会なのになぁ。
私がいなくてもこんな風にシャキッとして完璧な"生徒会"になってくれたらいいのに。

…そうなったら私は生徒会を辞めるのにな。
今二年生の最後らへんの時期だからあと一年って…長い。

「…生徒会。久保史緒里」

考え事をしていたらいつの間にか終わっていた様子。
お辞儀をして裏方へと行く。

「山下さん!無事言えたよ!褒めて…!」

「…はいはい。よく頑張りました。」

適当に言って受け流す。
もっとちゃんと言ってくれてもいいのに!なんて可愛い怒り方をしていたものだから思わず頭をポンポンする。

「えっ!?…美月に頭ポンポンされた…!」

顔を真っ赤にしてボソボソ言うものだから思わず笑ってしまった。



今日は集会が終われば下校。
でも私たちは帰れない。さっきの片付けだったりでやることがあるから結局学校を出るのが夕方とかになってしまう。
先生達も片付け手伝ってくてもいいのに。なんて思ってしまうけど口には出せずにいる。

「ねぇ美月。」

「なに?」

「今日は少し早く帰れそうじゃない?」

「…史緒里が書類とか早く片付けてくれたら帰れるよ?」

「うっ。相変わらず現実を突きつけてくるなぁ」

「話してる暇があるならちゃっちゃとやって!」

しばらく無言の時間が続く。
文字を書く音と、鼻歌が聞こえてくる。

「…そうえば、告白の返事はまだ?」

不意に聞いてくるものだから文字を書く手を止めてしまった。
…そう1週間前くらいにこの生徒会室で史緒里に告白された。でも告白というかラブレターを直接渡された。

…私はそのラブレターを捨てた。




だから今日、彼女を試そうと思う。

「…今から話す内容は、誰にも言わないでね」

私は人差し指を口にシーっとやる仕草をする。
そしてデタラメを彼女に話して、この内容を誰一人にも話せずにいたら私は、史緒里の告白に答えようと思う。


ちょうど茜さす感じがいい感じ。


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