乃木坂

□さようなら、想い人さん
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"いっせーのーで。"
二人揃ってそう言って同時に「好きです!付き合ってくれませんか?」

なんて言ったものだから思わず顔を見合わせて私と彼女は笑ってしまった。
これは両想いだと思い付き合った。

けど、付き合って数年が経ち私は成人して"彼女"は今年で成人というところで何の前触れもなく私たちは別れた。別れる前の記憶は曖昧で、案外これがお互いの為だったのかもしれない。なんて思ってしまった私は少し冷たい人間の部類に属すのだろうか。

_______

「もう私たちダメなのかな」

「史緒里がそう言うならそうなのかもしれない」

「そっか。そしたら別れよっか」

「わかった。」

________

思い出がフラッシュバック。
付き合ってすぐに海へデートした。今その海に一人で来ている。
何となく見つけた四つ葉のクローバーを持って私は浜辺を走る。これも懐かしい。
そのまま洋服を着たまま海へと飛び込む。なんか生きている感じがする。

________

史緒里の癖いつでも覚えてると思う。
嘘をつく時は髪の毛を触る癖があるのは当の本人は気づいてないらしい。これは私だけの特権かも。
実は別れる時も史緒里は髪の毛を触りながら別れを告げたからもしかしたら別れたくないんじゃないか。なんて思ってはいたものの言葉には出せずそのままお別れ。

別れを告げられた理由は何となくわかったような気がする。
多分私の______"愛"が重すぎたのかもしれない。
人より嫉妬してすぐ何かあれば愛を確かめる行為をする。周りから見たらきっと、めんどくさい女か重い女になると思う。

_______でも、それを史緒里も受け入れてくれた。
それほど私を好きってことなんでしょ?なんて少し余裕のある笑みをされたから思わず首に手をかけた。

「その手で私の首を絞めて殺してみてよ」

なんて言われたものだから当時は本気で殺しちゃいそうになったけどあと少しのところで自我が戻って殺さずに済んだりと、私と史緒里はいろいろとお互いにこの時点からおかしかったのかもしれない。

その後も相変わらず、愛を確かめる行為をしてお互いに疲れてそのまま寝るという。

__________

思い出浸りから数日後、私はまた浜辺に来た。
何となく26時に行ったら史緒里に会えそうな気がして。
パーカーのポケットに入っていたブラックチョコレート一粒を食べたら思わず苦くて咳き込む。
気分転換に煙草を吸う。波の音の他に足音が聞こえてきた。思わず振り返ると史緒里が少し離れたところに立っていてこちらを見ていた。

思わず史緒里の方に駆け寄りギュッと抱きしめる。
嫌な素振りをしないので、離れないように少し力を込めてまた抱きしめる。

「ねぇ、私たちもう一度やり直せるかな?」


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