乃木坂

□くらべられっ子
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【もう少し飛鳥みたいに優秀にならないの?】

両親からこの言葉を言われ続け数年が経った。
私は無事、姉の通ってる高校へ入学した。

高校生活も数カ月と過ぎても未だにちゃんとした友達がいない気がする。
そんないてもいなくても変わらないんじゃないか…そう思っているから友達すらできないんだと思う。

「山下さん…!この間の数学のノート見せて!」

「うん…!いいよ」

成績は悪くてもノートはちゃんとメモしたりしてるからこうやって友達でもない人に見てとかはしょっちゅうある事だからもう気にしない。
最初は見せることに戸惑ったりもした。字汚くて読めなかったとか言われるのが怖かったりしたから見せるのに躊躇した。

そんなこんなで入学して数ヶ月経ち少しずつクラスの人達とも少しだけだけど仲良くなれた気がする。
いろんなグループに交じったりしたけど、どれも私には合わなかった。結局一人でいるのが一番なのかもしれない。

「美月〜今日一緒に帰らない?」

「久保さん…いいよ」

「いい加減呼び捨てにしてもいいのに〜」

「…なんか慣れなくて。。ごめんね」

「いつか慣れた時に呼んでくれると嬉しいな。
…あっ今日帰りに本屋寄ってもいい?」

「いいよ!」

久保さんはいい人だと思う。
こんな私とも一緒に帰ってくれたりしてくれるし気は使ってくれるし。

久保さんと仲良くなったきっかけは、最近席替えをして隣の席になったのがきっかけだと思う。
最初はお互い敬語で話したりしてたけど最近になって久保さんは私のことを”美月”って呼んでくれるようになったのが嬉しい。


「じゃあ私ちょっとこの本買ってくるね!」

「わかった。私ここのコーナーの辺り見てるね」

「了解!」

そう言ってレジの方へと向かっていった。
その間あんまり興味無いけど、最近の流行りの小説のコーナーの辺りを見ることにしたけど特に買いたい本など見つからず雑誌の置いてある場所に行こうとした時、見覚えのある人が小説コーナーにいるのが見えた。

「…お姉ちゃん」

「美月じゃん。珍しいね本屋にいるの」

「友達の付き添いで来たの」

「そっか。」

「美月ー!ってあれ?知り合い?」

「あっ久保さん」

「美月の姉の飛鳥です。今後も美月のことお願いします。」

「お姉さん…!任せてください!」

「では、失礼します。」

そう言ってレジの方へ歩いて行った姉。
相変わらず姉は私のこと嫌いなんだなぁそう感じる
けどその事は久保さんにはバレたくなくて早く立ち去りたかったから姉が去ってくれてほっとしてる。

「美月のお姉さんめっちゃ可愛い人だね〜」

「私とは大違いだよね…」

「…そんなことない!美月も負けないくらい可愛いよ!」

なんて友達に気を使わせる私は最低だ。
でも、あと少しで分かれ道だから気を使わせずに済む。

「じゃあ、わたしこっちだから。またね」

「気をつけてね。…それとなんか悩み事とかあったらいつでも連絡してね!また明日ね」


お気に入りの曲を聴きながら家へと帰る。
今度、久保さんじゃなくて久保ちゃんって呼ぼうかな。なんて一人で考えていたらあっという間に家へ着いた。


「…ただいま」

「美月おかえり」

「お姉ちゃん。もう帰ってきてたんだ」

「いまさっき帰ってきたところ。」

「そうなんだ。」

そう言って会話を切り上げて自分の部屋に行こうとしたらお姉ちゃんに呼び止められて階段の途中で止まる。

「美月待って」

「なに?」

「…学校でちゃんと上手くいってる?」

「…はぁ。そんなに心配されなくても大丈夫だから」

「そっか。ならいいけど。何かあったらすぐ相談してよ」

「…そんな私の心配するより自分のこと心配した方がいいんじゃないの?受験あるんだし」

冷たくあしらって自分の部屋に駆け込もうとしたらそれすら阻止される。
どうせ私は誰からも期待されてないんだからほっといてほしい。

「なんか最近すごい私に対して冷たくない?」

「そんなことない。」

「そろそろテストとかもあるんだしわかんない所あったら……」

「っうるさいな。私の事はほっといてよ!」

そう言って掴まれていた腕をほどく。
そのまま自分の部屋へ閉じこもる。



「またやっちゃったな…」

ドアに寄りかかりそのまま座り込む。

私だって頑張ってるのに誰も認めてくれないんだ。
成績優秀な姉がいる限りは私はいらない存在だから早くこの家から出ていきたい。

「…っ。なんでこんな私なんかに構うんだよ。」

ぽつりと思わず本音を呟く。
左側がズキズキと痛んだような気がした。



大した結果も出せないのに図々しく生きててごめんなさい。


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