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□お節介なラブレター
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俺はピンクの封筒に溜め息を吐いた。

断れよバカ。

巣山が俺の幼なじみの子へと頼んできたのは、ミーティングが終わってすぐのことだった。

俺は自分が長年片想いしてきた彼女に、巣山のラブレターを渡すという大変バカげた行動をとろうとしてる。

今日はミーティングだけだからいい加減帰らなきゃいけないのにこの封筒が邪魔くさい。

学校帰りに通る彼女の家。

郵便ポストに黙って入れてしまえと思い行動を起こそうとした瞬間、今一番会いたくない彼女が家から出てきた。

何故か彼女も俺の顔を見て表情を曇らせる。

「孝介、今日は早いんだね」

「うん、まあ」

しばしの沈黙のあと俺は勢いに任せ彼女に渡した。

「巣山から」

同時に彼女から差し出されたのは巣山のと全く同じピンクの封筒。

「水谷くんから頼まれたの」

俺たちは顔を見合わせると首を傾げながら全く同じ封筒を見つめた。

俺が水谷から預かったという封筒を開けると頑張れの文字。

そういえば、水谷のヤツ、野球部のヤツらに次々とお節介焼いてたっけ。

自分だけは騙されないと思ってたのに、してやられた。

巣山がこういうことするなんて思わねえじゃん!

田島なら騙されなかったのに!

自分にムカつき安心しながらも俺は念の為、巣山から預かったラブレターを開けた。

そこには、やっぱり頑張れの文字。

さっきまで、泣きそうなくらい後悔してた俺には頑張れなんていらない。

二度と後悔しないようにちゃんと言ってやるよ!

「でも、俺の方が誰よりもずっと好きだかんな」

「うん、私も」

そう言った彼女の顔は泣いてるのにさっきより全然、晴れ晴れとしてた。

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