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□コロンブスの卵
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一生懸命、ゆで卵を机の上に立たせてはそっと手を離すのを繰り返す田島。

なんだ。

田島って、意外と常識人なんだ。

いつも、めちゃくちゃに恥ずかしいことを口走ったり、野球とかで信じられないことをやらかしてくれるから、常識外れした答えを期待してたのに。

ちょっと、がっかりしながら私はどこかで安心してた。

もし、田島が誰もがびっくりする答えを提示したら私はきっと嬉しいより哀しいから。

だって、田島が本物の天才だったら私は今でも感じる田島との心の距離をもっともっと感じて、いつか来るかも知れない別れの瞬間をリアルに感じてしまう。

だから、今は田島が普通の人間なんだってことがスゴく嬉しい!

「なあ、笑ってないで答え教えてくれよ」

ぶうと頬を膨らました田島がゆで卵を私に手渡す。

私は笑ったまま、そのゆで卵を受け取るとグシャッと机の上に立てた。

ゆで卵の底は殻が割れて無残な形になっている。

「えーっ!?それってなんかズルくねえか!」

田島が私に非難の言葉を浴びせるけど、私は笑顔のままゆで卵の殻を剥いた。

「ズルくないよ。誰も殻を壊しちゃいけませんって言ってないもん」

「そんなの屁理屈だ」

田島は最後まで納得いかない顔で私を見てた。

私としては、田島が『屁理屈』って単語を知ってることの方がなによりびっくりだ。

意外と常識人だった田島となら私は案外末永く幸せにやっていけるのかも知れないと思った。

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