短編小説
□君…不足。
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「先輩、すいません…待たせちゃって」
急いで走ってきたけど、結局先輩を15分も待たせてしまった;
申し訳無さそうにしていると…先輩はいつも笑顔で。
「お疲れっ、朔(サク)」
この笑顔に俺は恋してる。
【君…不足】
同じ大学の同じ学部の先輩。
知り合った切っ掛けは、隣の席だったから。
いつも本ばかり読んでいた俺に先輩から声を掛けられて、言葉を交わすようになってから。
気付けば、目でその姿を追って。
キスをしていた。
「朔がスキ…気持ち悪いかも知れないけど。これ、俺なりのケジメ」
―ごめん。
なんて言われて。
真っ白になった俺だったけど。
言葉を探して、文を繋げて。
やっと言えたのが…。
「その…答えってOKの時って、何て答えたら良いですか?」
クソ真面目に答えたら、先輩が笑って。
「何にも要らない…朔はずっと、俺の傍に居て」
そう言って、抱き締めて。
頭を抱え込まれる様にして、先輩の腕の中にいた。
それが始まり。
帰り道はいつも一緒に帰る。
朝は授業が異なるので、なかなか合わないが。