戦国無双の人々

□扇、飛ぶ
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■扇で戦う男
それだけではやってけない、戦国の世■



 某は真田幸村です。
 西軍の武将やってます。

 とつぜんだが、部将の武器といえば剣や槍だとおもうのですが、なぜに三成殿は扇なのか。

 たしかに、あの鋭利で端正な御仁には扇が似合うとおもう。

 だが……普通の扇で戦えるものなのだろうか?
 いや実際に戦っているのだから問題ないし、大陸の方では木蘭拳という扇を使う格闘がある。
 しかし、型はどうみたって日本舞踊だ。
「どうした、幸村」
 義扇をぽんぽん、と掌に打ちながら訪ねてくる。
 あ、いえ……、その扇素敵ですね。
 とっさに世辞をいってしまったのだが、三成殿は気分を良くしたらしく、唇が軽く笑む。
「幸村はわびさびがわかっておるな、」
 パッと、扇を広げてみせる。
 真っ白な扇に行書体で義の文字。
「これは千利休殿からいただいたのだ」
 え、千利休殿から?
「ああ、武士たるもの、ましてや上に立つものは茶をみなにふるまわなければならんだろう、大殿の勧めで千利休に茶のわびさびを教えてもらったのだが、あ、ちなみに太閤立志伝で俺のスキルは結構良い方だ」
 ――そんなこときいてませんよ、(ちなみに俺はそーゆうことはよくわからないが)
「あるひ、うるさいハエがおってな。手で払いのけていたら利休殿が目を輝かせて、この扇でしとめたのよ」
 ハエを?
「そうだ、小さなハエをだ」
 なぜか自慢気にいう。

 某のしっているところで、二刀流を使う少年ははしでハエを捕って食べたのを目撃したのとくらべればふつうだ。

「それが印象的でな。普通の武器で戦うのもつまらぬ、では扇にしようとおもったのだ」
 ――扇で、
「利休殿はもっとすごかった。忍びも見切られておられて「ふん、」と扇を投げて気絶させたこともあったし、作法を間違っている時ひざを叩くときのあの強さ――すごく痛かった。痣がなかなか消えなかったな。利休殿いわくこれでも手加減しているそうだ」
 なんだかんだ、茶の師匠のことを自慢された某だったが、突然三成殿の表情が厳しくなってハッとその扇を投げやった。
 その先には処刑されたはずの千利休殿が!
 三成殿のなけた扇を一差し指と中指でうけとめていた。
「やるのぉ……」
「まだまだ師匠には普通に適いません」

 三成殿のまわりには変な人が沢山いるとおもいしらされるのはこの時はほんの序の口だった。




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