戦国無双の人々

□生きにくい子
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■つたえたらもとにはもどらない■




 俺は無理やりねねさまに握られた手をどうすれば良いのか分からなかった。
 戦が終り、内政に切り替わった頃だ。
 諸国巡察からかえり秀吉様に報告したのち、突然後ろからねねさまがいらして手を握ってきた。
 ハッとみると、慈母にみちた笑みとぶつかってとまどう。

 握り返していいのか、ダメなのか。
「ねえ、三成、おもいだすわねぇ」
 な、なにを?
「ふふ、家にきた時のころすごいとまどってたのを」
 昔の話をもちださないで、ください。
「でも、懐かしいのよ。ちょっとみ、今も昔も難儀で生きにくい子なのだけど、すこしはかわったのかなってね」
 私はべつに生きにくくはありません。
「それは私たちがいるから?」
 ――…………。
「まったく、素直じゃない子、だね」
 くすくすと笑った先に、さらにギュウッとつよく握るねねさまの手。
 俺はしらず、ねねさまの手を強く握っていたらしい。
 心より手の方が正直だ。

 俺はふっとわらった。



 

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