金色の旋律

□デートしませんか?
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■デート■

「あ、あの香穂先輩?」
「なあに、冬海ちゃん?」
「デート……し、しませんか?」



「冬海ちゃんとデート!」
 火原は驚くついでにあらぬ想像をしてぽかぽかと頭を叩いた。
「火原、デートっていうのはべつにやましいことじゃないんじゃないかな? 女の子のデートはお買い物だよ、きっと」
 柚木は混乱する火原に苦笑してそういった。
「お、お買い物?」
「そ、お買い物」
「でもでも、冬海ちゃんの香穂ちゃんを見つめる瞳ってなんかちがうというか」
 もじもじと指を動かす火原にたしかにと柚木も同意して見せた。

 ――冬海さん、なんだか日野に特別な感情をもっているのは分かる。
 一人で練習している時も、セレクションの時の曲とはすこしかわってきたし、日野も彼女の事を気にかけている。

 こっちが妬けるぐらいに。

「柚木?」
 火原の不安げな瞳と声に気付いてハッと自分を取り繕う。
「じゃあ、そのデート、僕らでみまもらない?」
 柚木らしくない発言だけれど、火原はその言葉をまっていたのかコクコクと頷いた。



「日野、彼女とデートするんだって?」
 日野を自宅に送る社内で開口一番そうたずねた。
 すると日野は大きく目を見開いた。
「え、なんで知ってるんですか?」
「俺の情報網なめるんじゃないよ、ずっとお前を見張ってるんだから」
「あ、もしかして嫉妬ですか?」
「――嫉妬、お前に、俺が?」
「す、するわけないですよね、あははは」
「日野、こっち向け」
「え?」
 突然の接吻に日野は目を見張って顔を赤くした。
「お前と付き合ってるのは俺、女であっても許さない」
「――やっぱりしっとしてるんじゃないですか」
 クスッとわらう彼女に柚木は怪訝のため息で気恥ずかしさをごまかした。
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