金色の旋律

□だまし続ける愛
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■ふとしたとき恋におちていた■


「ゆ、ゆ…柚木せ、先輩」
「どうしたの、笙子」
 そう名で呼ぶと彼女は顔を真っ赤にした。
 そして顔をうつむけてしまう。
「なれないと、いけないよ」
「で、でもっ! ――柚木先輩がその、あの婚約者だなんておもえなくて」
「僕も最初はおどろいたよ。祖母が最終的にきめたのが君だったなんて」

 そう。
 高校を卒業してすぐ、自分の見合いが降るようにわいて出た。
 大学は星奏の付属大学へいった。
 祖母はそのことにまゆをひそめたが、条件付きで許してくれた――それがこれ。
 
 綾乃だとおもっていた。
 しかし、最終的に冬海だった。
 日野とは?
 彼女のことは好きだった――だけれど親友にとられてしまったのだからあきらめるしかない。
 束縛するのは好きではないし、かといって彼女らとはすっぱりと俺の人生から切り落とすことはできない――そんなことは俺の人生が彩りを失い、味気ないものになってしまうからだ。
 そんなわけで彼女たちとはいまもつきあいはあったが――。
「香穂先輩、おどろいていました私が柚木先輩の婚約者ときいて」
「そうだね、だれもがおもわないことだね」
 そういって俺は冬海の髪に触れ唇をかるくつけた。
 すると彼女の震えがおさまった。
「どうして、僕をえらんだの?」

 ――表面的をみてか?

「僕は君のことをかわいい後輩だとおもっていたのに」

 ――そう、日野とは違ったからかいがいがある、いや違うな

「婚約者になるなんて」

 ――ずっとだまして付き合いたい。

「私、柚木先輩が…怖いんです」
「え?」
 意外な言葉だった。
 はっとして彼女をみてももう震えはない、そっと身体を俺に預けているただ顔は恥ずかしいのかそれともおそろしいとおもっているのかあげてない。だけれど彼女は言葉を続ける。
「怖いでも――そばにいたいんです。優しい人だから。だめですか?」
 意味がわからない――俺の本性に気づいているということか?
「君は変わったね」
「え?」
「昔の君なら、思っていることを口にはしなかった――でも君は僕への恋慕を口にしてくれる――そんなところさらに好きになったよ」

 

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